Build Insiderオピニオン:大関興治(1)
大胆な取組で視点を変えよう
ビジネス&UXを重視する「セカンドファクトリー」社代表による「非ITアタマの創りかた」コラム連載スタート。
「なぜ、セカンドファクトリーが海の家なんてやるんですか?」
昨年の今ごろ、社内で飛び交っていた言葉です。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、弊社は昨年の夏に江ノ島で、複数の企業で運営するフードコートと合体した海の家に参入しました。
「IT企業が海の家?」と思われるかもしれませんが、私の中では1つのチャレンジのスタートでした。
セカンドファクトリーは、これまで多くの企業に対して「ビジネスにインパクトのあるシステム」をご提供すべく、何度かの大きな改革を行ってきました。企業の生い立ち自体も変わっていますし、業界の中では異端と見られることも多いのですが、われわれなりの哲学で行っていることです。異端なんて気にしていません(笑)。
そんな弊社の今回のチャレンジ(変革)は、これまでの中でも最も大きな、かつ大胆な施策でもありました。
コンセプトは「非ITアタマを創ろう」です。もう少し詳しく言うと「ブレーク ザ バイアス: 先入観の破壊」です。ビジネスにはいくつかの収益モデルがありますが、コンサルティングや受託設計開発が多い弊社のスタッフは、大半が製造業的なビジネスモデルに沿ってキャリアを積んできています。逆説的に言うと、製造業的なビジネスモデルしか知らない。アタマの中は自分が経験してきたビジネスモデルで支配されているのです。
われわれの業界はすごくシンプルなたとえをするのであれば、「今日はとても具合が悪いから明日頑張ろう」で済んでしまうことが、ある意味許されるビジネスモデルです。1人月のご契約をいただいているヒトが、その対価としての成果をご提供するのは「点」ではなく「線」。期間内にプログラムなり設計書なりを提供すればよいのですから、今日の遅れは明日に繰り延べしてもお客さまにご迷惑をお掛けすることは極力防げますし、収益に対しての影響もないか、あるいはあっても軽微で済むことが多いわけです。
他方、今日の遅れを取り返せないビジネスモデルもたくさんあります。天候に左右されるビジネスもたくさんあります。
こちらもシンプルなたとえでは、「今日は波が高いから出航はやめよう」という漁師さん。明日晴れて倍の稼働をしても、昨日の見込収穫が保障されるものではありません。飲食店もそうです。「今日は雨が降っているから今度にしよう」というお客さまの決断によって、売上が減少します。そのお客さまが明日来てくださるとは限りません。要は一期一会の繰り返しと言いますか「点」の積み重ねで成り立っているビジネスモデルもあるということです。
ここで重要なのは、「視点」です。企業活動を進めていく上で、ビジネスモデルが違えば、「売上」という観点1つとっても全く異なります。ソフトウェア開発では「12時~13時の売上はどうだったかな?」と考える管理職やオーナーさんはまずいないと思いますが、それが経営判断に最も大事なビジネスモデル(業種・業態)も存在するわけです。
こういったビジネスモデルを知ること、視点を持つこと、これまでの経験値によって出来たバイアスをブレークすること。これが海の家を運営した1つの大きな理由です。もちろん、本業はITですから、クラウド環境によって運営される海の家です。この施策によってこれまでのスタイルを根本から見直していきたいと思ったのです。
もちろん副産物として、クラウドやビッグデータに対して大きく視野を広げたエンジニアも何人も誕生しています。
デバイス×クラウド(サービス)の発展によって、これまでは導入できなかった、あるいは導入しにくかった領域へのIT適用が、ますます盛んになります。このような時代でやるべきことはこれまでとは異なり、ITの活用ができなかった方々に「ITの使い方」をサポートすることです。そのためにまずは自分たちの知らなかった知恵を持つことが、お客さまへの価値創造につながると感じています。
この先のミライに力強く生き残っていくために私たちのような企業に求められていることは、時代に合わせた変革だと思います。これまで以上に発注者側の視点をエンジニアまでもが意識できる環境を創り、課題や悩みを技術的に解決して差し上げることが、次の世代のUX(User eXperience)であるとも言えます。
もはやUI=UXの時代ではないのですから。
この後、このような視点を持ったチームを作るために弊社ではどのような取り組みをしているのかなどを、ご紹介できればと思っています。技術的な話題は他の方にお任せし、私たちなりに考えるエンジニアのミライに向けてのお話ができればと思います。よろしくお願いいたします。
大関 興治(おおぜき こうじ)
(株)セカンドファクトリー Chief Visionary Officer
大手私立大学の情シスにて(SI企業より出向)学内システムを構築したのがキャリアのスタート。メインフレームからのダウンザイジングを経験すると同時に、Webテクノロジに大いなる可能性を感じていたこと、あるキッカケを得て、1998年にセカンドファクトリー社を設立。
一貫してビジネス&UXを重要視したチーム形成と開発スタイルを提唱。現在は関連会社2社の取締役ほか、複数の非IT企業の社外取締役として「ヒト」づくりがメインの仕事、かつライフワーク。
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
4. 2年目となった海の家プロジェクト。今年の結果は如何に?(前編)
今年の海の家プロジェクト、お盆までの前半戦の出来事を紹介。台風の影響をもろに受けた今年のお盆商戦。そんなとき現れた○○おやじとは?
5. 2年目となった海の家プロジェクト。2014年の結果は如何に?(後編)
2014年の海の家プロジェクトは成功したのか失敗したのか。読者と担当をやきもきさせた後編がついに登場。夏はアツかったのかサムかったのか!?