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Build Insiderオピニオン:大関興治(2)

Build Insiderオピニオン:大関興治(2)

エンジニアたちが海の家をやってみた

2014年7月15日

「非ITアタマ」を創るために始めてみたこのプロジェクト。なぜ海の家にしたのか? どんな効果があったのか? 昨年の模様を振り返える。

セカンドファクトリー 大関 興治
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 今年も規模を拡大して海の家をやることになりました。

 今年は私たち極鶏.Barだけでなく、海の家の利用者全体のデータをQOOpaSkyDreamを使ってデータ収集&分析していきたいと思います。ご関心のある方はぜひ、お気軽にコンタクトくださいませ。

 冒頭から宣伝っぽくなってしまいましたが、昨年始めた海の家×ICT。前回にも書きましたが「非ITアタマ」を創るために始めてみたこのプロジェクト、どんな効果があったでしょうか? 今回は昨年の模様を振り返ってみたいと思います。

プロジェクトを海の家にした理由

 これまで弊社は飲食業だけでなく、顧客サービスを提供しているあらゆるジャンルのお客さまと、さまざまな取組みをさせていただいてきました。教育・eラーニング、航空・鉄道、レストラン・ホテル、公営ギャンブル、ファッション・コスメなどのeコマース、各種ゲーム、カメラやカーナビなどの組み込み、パチンコ・パチスロ機器や店舗向け情報端末など、お客さまが直接触れる部分を中心に16年で1000事案以上の経験があります。ですから、コンシューマーサービス系の企画や開発には、かなり自信があります。

 そのような企業ですので、「弊社のエンジニアはきっと、他社の方々よりもそういう部分のアタマが柔軟であろう」と踏んでいました。しかし、人員の増加に伴い、必ずしもそうではない状況が現れてきました。ますますICTのコモディティ化が進む時代の先駆者になれるよう、エンジニアリングスタッフに今まで以上にアタマを柔軟にしてもらうこと。弊社の価値維持向上には、このことが大事なタイミングでした。

 初のプロジェクトを海の家にしたのには、いくつかの理由があります。

 まず1つ目の理由は、弊社グループの目的です。私たちは、飲食業の方々へのソリューション提供と、それらを利活用した戦略のご提案ビジネスをしたいと考えています。リリースしているサービスも、基本は飲食業に最適化されています。そのため、飲食関連であることが重要でした。

 もう1つの理由は、短期で結果を出すビジネスモデルにしたかったためです。会計的には非常に変則的なビジネスモデルになってしまいますが、お店のオープンからクローズまでの間にやるべき経営的課題は変わりません。しかも飲食業参入自体が目的ではないため、テンポラリーの店舗が都合よいと判断したのです。

 極力自社のスタッフだけでやりきりたい。そんな思いからひと夏のプロジェクトを計画しました。

予想もしなかった45度を超える室内と長蛇の列との戦い

 正直なところ、はじめは相当手こずりました。少しはアタマが柔軟だろうと思っているとはいえ、普段コンサルティングや開発をしているメンバーがいきなり接客業をやるわけです。さらに、ある程度の標準化がなされているとはいえ、調理もするわけです。

想像しなかった課題も次々と発生します。最後まで悩まされた課題は、真夏の海の家の調理場の気温。

 普段クーラーの効いた室内で仕事をすることに慣れているスタッフ(私も含め)にとっては、想像を絶していました。唐揚げ屋ということもあり、フライヤーまわりは50度近くなることも。塩と水分を補給しながらの仕事は普段の仕事では絶対に味わえないでしょう(笑)。

 使っているデバイスも悲鳴を上げ、次々に熱でやられ始めます。

うれしい悲鳴も。

 海の家で本格的な唐揚げが食べられるとのうわさが広がり、オープン初日よりたくさんのお客さまにご利用いただきました。うれしいことこの上ないはずなのですが、オペレーションも標準化どおりにやっていること自体が効率の悪化を招きます。臨機応変さが重要な局面、ルールを愚直に守っているだけではサービスレベルが低下します。

このようなことを通じて、得てほしかったこと。

 普段は自席に座って、仕様どおりのお仕事をこなすことが多い業種です。上流工程に携わるメンバーになれば少しはお客さまのビジネスに触れることもできますが、今回の海の家のように、仕事には基準(仕様)どおりの仕事の仕方が通用しない局面がたくさん存在します。

 そんな中で「決めたこと」と「今、この瞬間の出来事への対処のバランス」を考えられることがどれだけ重要か。聞くだけではなかなか分かりません。さらには世の中にはさまざまな仕事があって、肝心なのはその仕事に従事する人々を支えることであって、システム開発をすること自体ではない。こういう局面を味わってもらうことによって、日頃コミュニケーションだけではなかなか伝わらない臨場感を自らが味わい、その意味を知る。

 もう1つ。海の家を選んだ理由にも書きましたが、短いスパンながらも経営を身近に感じることができる。経営(=ビジネスの根幹)を知るということは、エンジニアにとって価値のある経験だと思います。とはいえ、日常の経営に彼らを参画させることはとても難しく、弊社くらいの中小企業でも実践の中に彼らを混ぜるということは、相当勇気のいる決断です。当然、失敗はお客さまへのご迷惑に直結する可能性が出てくるわけです。

 一方、海の家は期間、規模ともにコンパクトですから、失敗が許される。仮にセカンドファクトリーが初めての飲食業を失敗したとしても、自らの範囲で十分に責任が取れます。皆さんの評価も「畑違いはそんなに甘くないよ!」という程度でしょう(もちろん食中毒などの場合は企業の死活問題になりますので、そのリスクを極力回避した結果の唐揚げでもありますが)。ですから、思い切りチャレンジさせることができる。思い切りシミュレーションさせることもできる。

 そのようなことを経験させたかったのです。

 人間やる気はあっても、未経験の分野に飛び込んでいくのは怖いもの。今思えば、スタッフ一人一人がまさにその葛藤との戦いだったように思います(中には肝の座ったエンジニアもおりましたが)。きっと何度も「こんなプロジェクト入りたいなんて言わなければよかった」と思ったことでしょう(笑)。暑いし、休みないし。社長からは経営的な視点で指摘されるし……。

 しかし、日々お客さまと接することでアタマも柔軟になり、そのうちにチーム同士で売上を競い合う(高品質なオペレーションを高速で回すことができないと売上の頭打ちが起こるわけです。これはフードコート型店舗にとってはリーチとリッチネスの相反くらい難しい課題だと思います)くらいに成長してくれました。またそのノウハウを共有するようになり、結果、江ノ島東浜のフード専売店舗1番の売上を達成することができました。

 飲食素人のIT企業が、小さい浜辺とはいえフード売上1番を獲得したという事実は、彼らには大きな勲章となったと思います。それと同時に、お客さまのビジネスを洞察する視点も広がったように思います。もちろんなぜこのようなプロジェクトを行ったのか理解も得ることができ、後に常設型店舗の運営にチャレンジするきっかけにもなりました。

 このような経験を得たエンジニアは、これまで持つ視野には存在しなかった部分への経験を経て、よりお客さまのビジネスの理解を深めようと努力し、ミライの弊社のエースとなってくれると確信しています。

 今年のオープンは7月5日。

 設営からさまざまなメンバーを投入しています。ちょうどこの記事を皆さんにご覧いただくころ、私はマイクロソフトのイベントで渡米中。泣き言も言えない状況になります。しかも今年は、規模も昨年の倍以上。昨年得たノウハウと実店舗で得たノウハウを生かして、帰国時には長蛇の列が見られるだろうことを期待して託します。

 この夏、江ノ島東浜にお越しの方がいらっしゃれば、ぜひのぞいてみてください。繁忙期の臨時アルバイトを除き、全て弊社スタッフがやっています。「Build Insiderを見てきたよ!」と伝えていただければ、冷たいものでもサービスします(笑)。

 2回にわたって海の家の話題とさせていただきましたが、次回以降はもう少し「弊社が考えるミライ型エンジニア像」に踏み込んだお話しをさせていただきたいと思います。

大関 興治(おおぜき こうじ)

大関 興治(おおぜき こうじ)

(株)セカンドファクトリー Chief Visionary Officer

大手私立大学の情シスにて(SI企業より出向)学内システムを構築したのがキャリアのスタート。メインフレームからのダウンザイジングを経験すると同時に、Webテクノロジに大いなる可能性を感じていたこと、あるキッカケを得て、1998年にセカンドファクトリー社を設立。

一貫してビジネス&UXを重要視したチーム形成と開発スタイルを提唱。現在は関連会社2社の取締役ほか、複数の非IT企業の社外取締役として「ヒト」づくりがメインの仕事、かつライフワーク。

 

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

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1. 大胆な取組で視点を変えよう

ビジネス&UXを重視する「セカンドファクトリー」社代表による「非ITアタマの創りかた」コラム連載スタート。

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2. 【現在、表示中】≫ エンジニアたちが海の家をやってみた

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3. ミライ型エンジニア?

「非ITアタマ」を創るために始めてみたこのプロジェクト。なぜ海の家にしたのか? どんな効果があったのか? 昨年のもようを振り返える。

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今年の海の家プロジェクト、お盆までの前半戦の出来事を紹介。台風の影響をもろに受けた今年のお盆商戦。そんなとき現れた○○おやじとは?

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5. 2年目となった海の家プロジェクト。2014年の結果は如何に?(後編)

2014年の海の家プロジェクトは成功したのか失敗したのか。読者と担当をやきもきさせた後編がついに登場。夏はアツかったのかサムかったのか!?

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