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「Pro相当機能が無料!」と話題になった「Visual Studio Community」の光と“影”
新登場したVisual Studio Communityとは? その狙いやメリットについて概説する。また、「どういった人が使えるのか」という規約上の条件と、規約違反しないための注意点を紹介する。
「Visual Studio Community 2013」(以下、VS Community)という新開発環境が、11月13日(日本時間)開催の開発者向けオンラインイベント「Connect();」で発表され(図1参照)、即日、ダウンロード提供が開始された。
日本ではニコニコ生放送(週アスPLUSの番組)により同時進行で中継され、累計視聴者数で3万人を超える大盛り上がりとなった。
ちなみに右下に写っているのは「芝村 達郎 氏(Microsoft MVP)」と「井上 章 氏(日本マイクロソフト エバンジェリスト)」。
Visual Studio Communityの“光”
Visual Studio Community 2013とは?
VS Communityについて、まだよく知らない人向けに簡単に紹介しておこう。
この製品は、従来のVisual Studio Express(以下、VS Express)を置き換える、新しい無料の開発環境で、Expressと比較して、主に以下のような点が強化されている。
- 開発種別ごとにバラバラだった環境が(詳細後述)、1つの「Communityエディション」に統合された
- Visual Studio Professionalエディション相当の機能を提供(図2)
- 「Expressエディションでも使いたい」とニーズが高かった「拡張機能」が利用できるように
「Pro相当機能が無料!」とネット上では大きな話題となったが、特に喜ばれたのは「拡張機能」が利用できるようになったことだろう。これにより、図3に示すような数多くのベンダー提供機能を開発環境に組み込めるようになった。
ちなみに発表しているのはマイクロソフトのデベロッパー部門副社長のS. Somasegar氏。
これに合わせて、例えば無料のXamarin StarterエディションがVisual Studio内で利用できるようになり、Visual Studio上でXamarinを用いたiOS/Androidアプリ開発が、完全無料で行えるようになったりしている(ただし、Starterエディションには小さなサイズのアプリしか開発できないなどの制限がある。参考:「VS Community 2013 と VS 2015 Preview と Xamarin のまとめ (2014/11/13 現在) - Xamarin 日本語情報」「Visual StudioでiOS/Androidアプリが書けるXamarinを試してみた(iOS編) - Build Insider」「同(Android編) - Build Insider」)。
Visual Studio Community 2013の狙い
Visual Studio 2005で登場したVS Expressは、当初、「for C++/C#/Visual Basic」などのように開発言語ごとに分けて提供されていた。これにより、C/C++開発者などの非.NETの開発者の間にもExpressエディションの利用が広がっていった(と筆者は認識している)。
その後のVisual Studio 2012の登場時に、「for Web/Windows/Windows Desktop」などのようにプラットフォーム種別ごとに分けて提供されるように変更された。しかし現在では、IoT(モノのインターネット)などのデバイスが登場したり、Windows開発者でもアプリでWebと連携するのは一般的になってきたりしており、実質的にはこれらのプラットフォームを組み合わせて開発せざるを得ないというのが現実だ。
こういう事情を反映して、「XamarinやCordovaなどによるiOS/Android開発も含め、あらゆるプラットフォームをターゲットとした開発をより実践しやすい環境へとVisual Studioを強化し(図4)、その環境を.NET開発者以外にも広く使ってもらおう」というのが、今回のVisual Studio Community登場の意図のようだ。
ちなみに右下に写っているのは「土屋 奈緒子 氏(日本マイクロソフト Visual Studio マーケティング)」。
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このように、発表時点では「これはVisual Studio .NET登場やExpressエディション登場以来のビッグニュースだ」と喜んだわけだが、規約を見て「どういう制限があるか」や、何日かたってより具体的に内容を考えられるようになって、「一部では難しい点があるなぁ」と感じるようになった。本稿ではこれについて、つまりあまり触れられていないVS Communityの“影”について書くことにした。前置きが長くなったが、ここからが本題だ。
Visual Studio Communityの“影”
まずはVS Communityの規約をよく確認してみよう。
VS Communityを使ってもよい人
まず規約で注目されたのが「誰がこれを使えるか」という点だ。これには、次の2種類がある。
- 1個人開発者(無償だけでなく、有償アプリも開発可能!)
- 2企業体(さらに細かな条件があるので後述)
2の条件では、まず以下の基準をクリアしなければならない。
- A「研修環境」「学術的研究」「オープンソース開発者」が利用する場合は、何人でも利用可
- B「企業内のPCが250台以下」かつ「年商1億円未満」である場合は、5名まで利用可
「年商」という条件について
特にBの条件には注意が必要だ。この「年商」の意味は、厳密にはマイクロソフトに問い合わせる必要があるが、「年間の総売上高」を指していると考えられ、商品を仕入れて販売するような薄利多売型のビジネスの場合は、小さな会社でも簡単に引っ掛かってしまうかもしれない。
このような「年商」に関する規約はExpressエディションには無かった(と筆者は認識している)ので、逆にExpressよりも厳しい条件に変わったことになる。それなりに年商がある企業で、例えば個人用やチーム内の数人のために小さなバッチ処理をVS Expressで作っていたような場合は、無料のVS Communityに乗り換えることはできない。このため、人によっては大打撃になってしまう可能性がある。
なら「5人の開発者で小会社化すれば……」!?
上の図4では、ニコ生で「開発部門だけ子会社化」というユーザーコメントが表示されたものを選んで掲載した。このコメントの意味は、例えばVS Communityを使うために、「開発請負会社を新設して、そこに5人までの開発者を移して年商は1億円未満に押さえれば、条件をクリアできるよね」ということだ。本当にこれを実践する人はいないと思うが、これへの対策のためか、上記の条件に次の注釈が後日、追加された。
※ただし、上記企業が、これ以外の企業からの何らかの報酬を伴う委託に対しアプリケーション開発する場合には Visual Studio Community は利用できません。
この注釈に従うと、確かに上記の「開発部門だけ子会社化」は不可能になる。それだけでなく、Aのような企業体でも金銭が絡む開発には注意が必要となってくるだろう(例えばオープンソース開発でも、そのアプリケーション開発の一部に「報酬を伴う委託」が少しでも含まれていれば、規約上問題がないかをきちんと確認する必要がある)。もちろん企業ではなく「個人で友人のために作ったアプリに謝礼をもらう」(有償アプリ扱い?)というのは問題ないと思うが、Expressと比較して利用条件が複雑になってしまった感は否めない。
こういった複雑な規約になったのは、「Professionalエディションの購入者が、無料のCommunityエディションに乗り換えないように」という意図だと想像しており、その考えも「当然だ」と理解できるが……「年商」の部分などがもう少し幅広い規約の方が正直、うれしかった。
VS Expressの継続利用
こういった条件に引っ掛かってしまいVS Communityを使えない場合は、従来のVS Expressを今後もダウンロードして使用できる。ただし、Expressエディションは今後、アップデートされないことが明言されているので、Visual Studio 2015以降の最新機能はExpressエディションでは使えない。
と、「逃げ道もあるな」と安心したところで、「VS Community 2013公式ページ」上で、Expressエディションに関する次の条件を発見した(※2015/08/05 更新: 「次の条件」に関する記述は、上記リンク先ページから削除されたため、本稿での記載も削除しました)。
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以上をまとめると、Expressと比べて機能豊富なVisual Studio Communityの登場は大変歓迎すべきで、特に個人開発者やオープンソース開発者には大きな恩恵があるだろう。使いたいと思った人は、ぜひ下記のリンク先からダウンロードして使ってみてほしい。
- Visual Studio Community 2013 with Update 4(※日本語ランゲージパックも必要)
一方、本稿で指摘したように規約面では厳格化・複雑化しているので、違反してしまわないように注意してほしい。また必要に応じて以下のExpressエディションも使うとよいだろう。
- Visual Studio Express 2013 with Update 4 for Web
- Visual Studio Express 2013 with Update 4 for Windows
- Visual Studio Express 2013 with Update 4 for Windows Desktop
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