Android Wearアプリケーション開発(1)
Android Wearの基礎知識
グーグルが開発する腕時計型のウェアラブルデバイス「Android Wear」用のアプリの開発を解説する連載がスタート。Wearの基本的な機能や特徴を紹介する。
はじめに
Android Wearは、グーグルが開発する腕時計型のウェアラブルデバイスだ。2013年5月にDeveloper Preview版が公開された当時はエミュレーターで動作するのみであったが、今年のGoogle I/OでSDKと実機が公開された。Preview版では限られたことしかできなかったが、SDKが公開され、アプリとして実現できる範囲も大きく広がった。
本連載では、まずAndroid Wearの基本機能と、開発をする上で必要な基礎知識を説明し、その後、実際のアプリの作り方を、サンプルコードを交えながら解説していく。
Android Wearの機能・特徴
Android Wearのコンセプト
Android Wear(Google Glassもそうだが)の中心となるコンセプトは、ユーザーがコンピューターデバイス上で消費する時間を最小限にとどめ、日常生活を邪魔しないようにするというものだ。それを実現するため、Android Wearの機能やデザインは、マイクロ・インタラクション、つまりユーザーが最小限の操作で目的を達成できるように実装されている。情報は極力ひと目見ただけで理解できる(=Glanceable)ように表示され、操作も極力シンプルであることが徹底されている。
Android WearとHandheld
Android Wear(以下、Wear)を使用するには、Androidのスマートフォンもしくはタブレットが必要である(以下、Wearとペアになるスマートフォン/タブレットを単に「Handheld」と記す)。
HandheldにはAndroid Wearアプリをインストールし、WearデバイスとはBluetoothでペアリングする必要がある。インターネット接続が必要な場合は、Wearデバイス自体は接続を行わず、Bluetoothを介してHandheld上で行われる。
Android Wearで何ができるか
Android Wearの主要な使い方としては、
- Handheld上の通知をWearデバイス上で受け取り、通知に対しての何らかのアクションを行う
- Handheld上のアプリをコントロールする
- 音声検索/音声コマンドの実行
などが挙げられる。
Handheldの通知は、Wearではカードとして表示される。このカードの一覧を「コンテキスト・ストリーム」と呼び、上下のスワイプでカードを行き来できる(図1)。また、各カードを左右にスワイプして、追加の情報を表示したり、通知に対してのアクションを行うためのアクションボタンを表示したりできる。
例えばGmailのアクションボタン一覧には[Reply]ボタンがあり、このボタンをタップすると、音声入力でメールに対して返信できる(図2)。
通知からHandheldのアプリをコントロールする例として、カメラアプリを紹介する。
図3に示すように、Handheldでカメラアプリを起動すると、Wearに通知が表示される。この通知をタップすると、Wear上でシャッターを切るための画面が表示される。
通知以外にも、ホーム画面でタップすると、「キュー・カード」と呼ばれる画面が起動され、音声コマンドや、リスト一覧からタップで選択してさまざまなアクションを実行できる(図4)。
以下は、Wearで使用できる代表的な音声コマンドの一覧である。
ボイスコマンド(英語) | ボイスコマンド(日本語) |
---|---|
Send a text | SMSを送信 |
Call a car/taxi | タクシーを呼ぶ |
Take a note | メモを入力 |
Set alarm | 通知を設定 |
Set timer | タイマー設定 |
Agenda | 予定リスト |
Show heart rate | 心拍数を表示 |
Show step count | 歩数計を表示 |
これ以外に「Start <ActivityName>」のボイスコマンドで、指定した名前のActivityを持つアプリケーションの起動もできる。自作アプリで音声コマンドを利用したいがプリセットの音声コマンドに当てはまらない場合は、この仕組みを利用することになる。
なお上記の一覧に日本語の音声コマンドの例も載せているが、Wearの言語設定はHandheldの言語設定と連動しており、Handheld側の言語を切り替えるとWearの言語(表示および音声認識)も切り替わる。
Android Wearのハードウェア
2014年現在発売されているSamsung Gear LiveとLG G Watchのハードウェアスペックは以下の通りである。
Samsung Gear Live | LG G Watch | |
---|---|---|
スクリーン | 約4.14cm四方 320×320 AMOLED display (278ppi) | 約4.19cm四方 280×280 IPS LCD display (240ppi) |
OS | Android 4.4W | Android 4.4W |
CPU | 1.2GHz Snapdragon 400 | 1.2GHz Snapdragon 400 |
RAM | 512MBytes | 512MBytes |
ストレージ | 4GBytes | 4GBytes |
重量 | 59g | 63g |
厚さ | 8.9mm | 9.95mm |
バッテリー | 300mAh | 400mAh |
また、以下のセンサー類が利用可能で、アプリからもアクセスが可能だ。
- 重力センサー
- ジャイロスコープセンサー
- 線形加速度センサー
- 回転ベクトルセンサー
- 方向センサー
- 傾きセンサー
- 磁気センサー
- Significant Motion Sensor
- 歩数計
- 歩行検知センサー
- ハートレートモニター(Samsung Gear Liveのみ)
ほか、音声入力のためマイクは付いているが、スピーカーは付いていない。また当然ながらカメラも付いていない。
Android Wear用アプリのインストール
Wear用のアプリをインストールするには、Wearに対応したAndroidアプリを通常通りHandheld側でインストールすればよい。Wearのアプリは、Bluetooth通信によってHandheldデバイスから自動的にインストールされる。
Wearに対応している代表的なアプリは以下のページにまとまっている。
しかしこれらはほんの一部で、他にも多くの開発者がWear対応アプリをリリースしている。今のところ、全てのWear対応アプリを一覧する手段はないが、将来的にはそのような機能もPlay Storeから提供されると思われる。
Android Wearの情報リソース
全て英語になるが、Android Wearの情報リソースをいくつか紹介する。
Android Wearの開発ドキュメントは以下にまとまっている。
最新の情報をチェックしたり、開発者同士で情報交換をしたりするには、Google+のコミュニティをチェックするのがよいだろう。
また以下のGoogle I/Oセッションビデオも基礎を理解するのに役立つ。
まとめと次回
Android Wearの基本的な機能や特徴を紹介した。次回はAndroid Wearのアプリの作り方を、サンプルコードを交えながら解説する。
1. 【現在、表示中】≫ Android Wearの基礎知識
グーグルが開発する腕時計型のウェアラブルデバイス「Android Wear」用のアプリの開発を解説する連載がスタート。Wearの基本的な機能や特徴を紹介する。
2. Android Wearのアプリの作り方
Android Wearアプリの基本的な開発方法を、サンプルコードを交えながら解説。Wear用に拡張されたAPIの中からNotificationとデータ送受信について説明する。