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Xamarin逆引きTips

Xamarin逆引きTips

Xamarin.Formsの既存のコントロールを拡張するには?

2014年7月23日

Xamarin.Formsのコントロールにはプラットフォーム共通の基本的な機能しか含まれていない。既存のコントロールを拡張して、ネイティブ側で機能を追加する方法を解説。

奥山 裕紳(@amay077
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 Xamarin.Formsには40個以上のコントロールが用意されており、基本的な機能はカバーしているが、クロスプラットフォームに対応するために、最大公約数的な機能しか提供していない。今回は、既存のコントロールを拡張して、ネイティブ側で機能を追加する方法を解説する。

1. シナリオ

 Xamarin.FormsのButtonコントロールは、クリック(Click)イベントは提供されているものの、“長押し”した時のイベントは提供されていない。このButtonに長押し時のLongTapイベントを追加する。

2. Xamarin.Formsプロジェクトを作成する

 メニューバーの[ファイル]-[新規]-[ソリューション]から表示したダイアログで、[C#]-[Mobile Apps]-[Blank App (Xamarin.Forms Portable)]を選択し、ソリューション名を「LongTapButtonSample」として[OK]ボタンを押す。

 LongTapButtonSampleプロジェクトにLongTapButton.csファイルを追加し、以下のコードを追記する。

C#
public class LongTapButton : Xamarin.Forms.Button
{
  public event EventHandler LongTap;

  public void OnLongTap()
  {
    if (this.LongTap != null)
    {
      this.LongTap(this, new EventArgs());
    }
  }
}
Buttonクラスを継承したLongTapButtonクラスのコード(LongTapButton.cs)

 このコードでは、Xamarin.FormsのButtonクラスを拡張してLongTapButtonクラスを作成し、イベントLongTapと、それを発生させるためのメソッドOnLongTapを実装している。

 本稿のサンプルでは、ボタンを1つ配置したページを作成する。そこでApp.csファイルには、LongTapButtonコントロールを配置するページを実装する。具体的には以下のコードのように修正する。

C#
public class App
{
  public static Page GetMainPage()
  {   
    var button = new LongTapButton
    {
      Text = "Long tap me",
      VerticalOptions = LayoutOptions.Center,
      HorizontalOptions = LayoutOptions.Fill,
    };

    button.LongTap += (sender, e) => 
      button.Text = "Long tapped!";

    return new ContentPage
    { 
      Content = button
    };
  }
}
LongTapButtonコントロール(=ボタン)を1つだけ配置したページのコード(App.cs)

 これで、プラットフォーム側を実装すれば、ボタンを長押しするとボタン名が変更される。

3. Xamarin.Formsパッケージを更新する

 Xamarin.Formsのソリューションを作成すると、各プロジェクトにXamarin.Formsパッケージが読み込まれるが、作成直後はバージョンが古い(執筆時点で「1.0.6186」)ので更新する。特にここで解説するコントロールの拡張に関連するクラスは、古いパッケージでは動作しないので、必ず行う必要がある。

図1 Xamarin Studioのパッケージ更新メニュー

Visual Studioの場合は[Nuget パッケージの管理]ダイアログの[更新プログラム]で更新する。

 Xamarin Studioのメニューバーの[プロジェクト]-[Update Packages]を選択すると(図1)、ソリューションに含まれる全てのパッケージが更新される。現在のバージョンは「1.2.1.6229」だ(図2)。

図2 更新後のXamarin.Formsパッケージのバージョン
図2 更新後のXamarin.Formsパッケージのバージョン

4. AndroidでLongTapButtonの機能を実装する

 LongTapButtonSample.Androidプロジェクトに、LongButtonRenderer.csファイルを追加し、以下のコードのように実装する。

C#
using System;
using Xamarin.Forms.Platform.Android;
using Xamarin.Forms;
using LongTapButtonSample;
using LongTapButtonSample.Android;

[assembly:ExportRenderer(
  typeof(LongTapButton),
  typeof(LongTapButtonRenderer))] // ←2

namespace LongTapButtonSample.Android
{
  public class LongTapButtonRenderer : ButtonRenderer // ←1
  {
    protected override void OnElementChanged(ElementChangedEventArgs<Button> e) 
    {
      base.OnElementChanged(e);

      var formsButton = e.NewElement as LongTapButton; // ←3
      var droidButton = this.Control;

      droidButton.LongClick += (sender, _) => // ←4
        formsButton.OnLongTap();  
    }
  }
}
Android用の独自ButtonRendererの実装コード(LongButtonRenderer.cs)

 Xamarin.Formsの描画は、各コントロールに用意されているRendererによって行われており、Buttonの場合はButtonRendererがその役割を担う。1で、ButtonRendererクラスを拡張してLongTapButtonRendererクラスとして、Androidでの機能実装を行う。

 2が特に重要な要素で、このExportRenderer属性によって、LongTapButtonコントロールの描画にはLongTapButtonRendererクラスを使用する」と定義している。Xamarin.Formsのフレームワークはこの属性を読み、コントロールの描画を委譲する。

 3を見ると分かるように、OnElementChangedメソッドのパラメーターであるElementChangedEventArgs<Button>オブジェクトのNewElementプロパティで、Xamarin.Forms側のコントロールが取得できる。ButtonRendererなのでButton型のオブジェクトが取得されるが、2の定義により、その実体は必ずLongTapButton型である。そして、Android側のボタン(Android.Widget.Button)は、ButtonRendererオブジェクト(=this)のControlプロパティより取得できる。

 Android.Widget.ButtonにはLongClickイベントが備わっているので、このイベントハンドラーでLongTapButtonコントロールのLongTapイベントを発生させる(4)。

 ここまでのプログラムをAndroidで実行し、ボタンを長押しすると、次の画面のようになる。

図3 実行画面(Android)
図3 実行画面(Android)

5. iOSでLongTapButtonの機能を実装する

 iOS側も実装もAndroid側と同じ要領だ。LongTapButtonSample.iOSプロジェクトに、LongButtonRenderer.csファイルを追加し、以下のコードのように実装する。

C#
using System;
using Xamarin.Forms.Platform.iOS;
using Xamarin.Forms;
using LongTapButtonSample;
using LongTapButtonSample.iOS;
using MonoTouch.UIKit;

[assembly:ExportRenderer(typeof(LongTapButton), typeof(LongTapButtonRenderer))]

namespace LongTapButtonSample.iOS
{
  public class LongTapButtonRenderer : ButtonRenderer
  {
    protected override void OnElementChanged(ElementChangedEventArgs<Button> e) 
    {
      base.OnElementChanged(e);

      var formsButton = e.NewElement as LongTapButton;
      var iosButton = this.Control; 
      iosButton.AddGestureRecognizer(new UILongPressGestureRecognizer(x => 
      {
        if (x.State == UIGestureRecognizerState.Recognized) 
        {
          formsButton.OnLongTap();
        }
      }));
    }
  }
}
iOS用の独自ButtonRendererの実装コード(LongButtonRenderer.cs)

 Android側とほとんど同じコードである。異なるのはiOSなのでButtonRenderer.Controlプロパティから取得できるのがUIButton型のオブジェクトであること、UIButtonにはLongClickのようなイベントがないので、UILongPressGestureRecognizerクラスを使って長押しを検知していることだ。

 ここまでのプログラムをiOSで実行し、ボタンを長押しすると、次の画面のようになる。

図4 実行画面(iOS)
図4 実行画面(iOS)

まとめ

 Rendererを拡張することで、Xamarin.Formsの既存のコントロールを容易に拡張できる。このRendererの仕組みは、新しいコントロールを作成したり、画面(Page)すらも制御したりできる。これらの方法は次回以降、取り上げていきたい。

 他のクロスプラットフォーム開発ツールでも、既存の部品に足りない機能をネイティブ側に委譲する仕組みは存在するが、Java言語やObjective-C言語など、ネイティブの開発言語・開発ツールで作成する必要があり、アプリと共にデバッグすることができない(また、アプリとの「つなぎ」が一番トラブルになりやすい)。Xamarin.Formsは、Xamarin.Android、Xamarin.iOSが提供するネイティブSDKの.NETラッパーが利用できるので、同じ言語で、同じソリューション内でデバッグしながら開発できるのが大きなメリットだ。

 コントロールの拡張に関しての公式な解説は、「Customizing Controls for Each Platform | Xamarin(英語)」を参照されたい。

 なお、公式ドキュメントに「The renderer APIs are not yet final」とある通り、今後、APIが変更される可能性があることを留意いただきたい。

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第10回~第14回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

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