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VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意

極意1: ここがポイント、Windowsストアアプリ認定の要件

2013年7月19日

「Windowsストア向けのアプリ申請で、いかにしたら認定されるか」についてのノウハウを紹介する連載がスタート。今回は認定要件のドキュメントから注目ポイントを取り上げる。

薬師寺 国安
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はじめに ―― 本連載について

はじめまして。薬師寺国安といいます。これから13回にわたって「VB開発者のためのWindowsストア・アプリをリリースするための13の極意」について書かせていただきます。よろしくお付き合いのほど、お願いいたします。「VB開発者のための」と銘打ってはいますが、メイン・テーマは「Windowsストア向けのアプリ申請で、いかにしたら認定されるか」の、ノウハウがメインになりますので、VBコードは最低限しか出てきません。その点、ご了承ください。

Windowsストアにアプリを申請する前に

 さて、Windowsストア・アプリの開発が完了し、さっそくWindowsストアに申請してみることになったとしよう。その前に、「どういった審査基準なのかを理解しておくか!」ということで「MSDN: Windows 8 アプリの認定の要件」というドキュメントに目を通してみると、これが意外と理解しづらい。

 そこで、本連載の第1回目は、2013年7月16日現在、264個のアプリをストアに公開している筆者の経験*1を基に、「Windows 8 アプリの認定の要件」の中で、特にこの項目には注意が必要だ、という箇所を抜粋して解説していく。ただし、あくまでも筆者の経験に基づくものである。説明内容に独断と偏見が混じっていた場合はお許しいただきたい。

  • *1Windows 8の[検索]チャームで「ストア」を指定し、検索欄に、「kuniyasu」または「YakushijiKuniyasu」または「eightman」と入力すると、筆者の公開しているアプリの一覧を見ることができる。

1.1 アプリは、サポートしているすべての言語と市場で、ユーザーに独特かつ独創的な価値または実用性を提供しなければならない

 Windowsストアが始まった初期のころ(今から約1年前)は、この項目に関して特に注意する必要がなかったように記憶している。まだ、審査の基準も確立されておらず、審査員の認定の要件に対する認識も統一されていなかったのだろう、と筆者は考える。

 しかし、最近の審査では、この項目でリジェクトされることが多くなった。この要件の趣旨は、簡単に言えば、「このアプリが、ほかの類似のアプリと比較して、どういう違いがあるのか、ユーザーにとっての付加価値はどこにあり、何のメリットがあるか」ということだ。

 筆者は初期のころ(約1年前)、アニメーションを伴って現在の日付と時刻を表示するアプリを申請したことがある。約1年前だから、特に問題もなく認定された。それから半年以上経過して、機能を追加し、「新版:時刻表示」(次の画面を参照)という名称で申請した。すると、前回の「時刻表示」は問題なく認定されていたアプリが、「新版:時刻表示」では、この「独創的な価値と実用性」でリジェクトされてしまった(後述の「対処法」で説明するとおり、現在は認定されている)。

アニメーションを伴って現在の日付と時刻を表示するアプリ

 認定の要件は、結構、小まめに改定されている。先の「認定の要件」のページの一番下に、「改定履歴」なるものが記載されている。以前は認定されたから、今回も認定されるだろう、と考えるのは大きな誤りだ。アプリの品質向上のために、「認定の要件」は、日ごとに変化していることを、肝に銘じておく必要がある。

筆者が取った対処法

 最初にリリースした「時刻表示」のアプリは、意外と受けがよく、着実にダウンロード数を伸ばしていた。リリース2を申請するころには1500ダウンロードをオーバーしていた。そこで、「審査担当者へのコメント」欄に以下の文章を書いて再申請すると、すんなりと認定された。

この「新版:時刻表示」は、「時刻表示」として公開していたアプリに機能を追加して、「新版:時刻表示」として申請したものです。「時刻表示」のアプリは、現在、ダウンロード数が1500以上あります。これだけのダウンロード数があるということは、このアプリを必要とするユーザーが存在するということです。価値も実用性もないアプリなら、ここまでダウンロードされないと思います。1500以上のダウンロード数があるということは、ユーザーはこのアプリに価値と実用性を見出している証しだと思います。

 詳しくは別の回で解説するが、申請する時の「審査担当者へのコメント」欄には、4000文字の入力ができるようになっている。「新版:時刻表示」のように、このコメント欄を大いに利用して、申請したアプリへの思いや、ほかのアプリとの差別化や付加価値などを、熱意を持って書いておけば、意外とこの項目はクリアできる可能性がある。

フォルダー内の画像を表示するアニメーション

 1.1の認定要件項目でリジェクトされた経験が、このほかにもある。フォルダー内の画像を、アニメーションを伴って、1個ずつ表示させていくアプリは、アニメーションに独自性がある場合は認定されるが、単に回転したり、ズームイン、ズームアウトしたりする、どこにでもあるアニメーションの方法では、この項目に抵触してリジェクトされる可能性が高いので、注意が必要だ。

 「画像の3D回転」(次の画面を参照)は、認定済みの筆者のアプリだが、これ以降に申請した、アニメーションを伴ってフォルダー内の画像を表示させるアプリは、ことごとく、この要件に抵触してリジェクトされたことを付け加えておく。

アニメーションを伴って指定したフォルダー内の画像が表示されるアプリ

2.4 アプリで提供されるプライマリ エクスペリエンスはアプリ内で行われなければならない

 この項目は一見しただけでは、何のことかが分からないという人も少なくないだろう。かいつまんで言うと、アプリが提供している価値はアプリ内で完結している必要があるということだ。具体的には例えば、Windowsストア・アプリで、Webブラウザーを開いて情報を表示させるアプリがあるが、このようなWebブラウザーを開くことによって価値を提供しているアプリは、(本来ならば)ストアの審査に通らない。

 例えば筆者の公開しているアプリ「現在地からの大学検索」(次の画面を参照)で、[Webで表示]ボタンをタップしてブラウザーを起動することによって価値を提供することは、リジェクトの対象になる。しかし、筆者のこのアプリは認定されている。その認定方法は後述する。

[Webで表示]ボタンをタップしてブラウザーが直接起動して情報を表示した

 このように直接、ブラウザーを起動して情報を表示させるのは、基本的にリジェクト対象となる。また説明にも、「[Webで表示]ボタンでブラウザーが起動します」と記述し、そのスクリーンショットを掲載しておくと、間違いなくリジェクトされるので、注意が必要だ。

筆者が取った対処法

 筆者が、このアプリを認定させるのに取った方法は、「審査担当者へのコメント」欄に次の文書を書いておくことだった。

ブラウザーでの表示はあくまでも補助的手段で、メインは大学の所在地をBing Maps上に表示する点にあります。

 そして、ブラウザーでの表示画面のスクリーンショットを掲載したりはせず、説明にも「[Webで表示]ボタンでブラウザーが起動して情報を表示します。」などとは一切書かないことだった。ブラウザーの件には触れないことが一番だ。筆者の場合は、この方法で直接、ブラウザーを起動するアプリでも、全て認定されている。

3.5 アプリはタッチ入力、およびキーボード入力とマウス入力を完全にサポートしなければならない

 最近申請する筆者のアプリは、この項目に抵触してリジェクトされることが多い。申請したアプリは、タッチやマウスおよびキーボードで操作できなければ、リジェクトとなる。特に、例えば「キーボードの[←][→]キーで画像が選択される必要がある」や「[Tab]キーでフォーカスがコントロールに移動しなければならない」などがリジェクトの原因となる。

 最近、リジェクトされたものの、その後に認定されたアプリに「カメラで秋」というのがある(次の画面を参照)。

「カメラで秋」のアプリで画像を一覧するページ

 上記の画面では、キーボードの[←][→]キーを使って画像が選択されなければならない。筆者の環境では問題なくキーボードで画像の選択ができるのだが、「認定レポート」に不合格と表示された(次の画面を参照)。赤い枠線で囲まれたのがリジェクトの理由となる。リジェクトされた場合はメールでも不合格の知らせが来る。しかし、リジェクトの理由は書かれていない。リジェクトの理由は、ダッシュボードに入って確認する必要がある。

「カメラで秋」のリジェクトされた認定レポートの内容

 どこの画面でタッチやマウス、キーボードでの操作が機能しなかったのかは、一切書かれていない。ときどき、zip形式で圧縮されたスクリーンショットが添付されている場合もあるが、いつも添付されているわけではない。慣れるまでは、なかなかどこの画面で不具合が発生し、どう対処したらいいか戸惑うだろう。リジェクトされた場合の理由は、あくまでも事務的で、認定の要件のどこに抵触したかが記載されているだけで、解決は自力でしなければならない、と覚悟しておく必要がある。

「カメラで秋」の画像一覧画面で、キーボードで画像が選択できないというリジェクト理由で、筆者が取った対処方法

 筆者の環境では問題なく動作していたので、再度、アプリ・パッケージを作り直してアップロードし、「審査担当者へのコメント」欄に、次のように書いておいた。すると問題なく認定された。

タッチ、マウス、キーボードで操作できないのは、画像一覧画面での出来事ではないかと思います。画像一覧画面では、一番新しい画像が選択状態になっています。前の画像を選択して[←]キーを操作しても選択できない場合は、[→]キーを操作してみてください。キーボードで画像の選択が可能になります。もし、この画面での不具合でない場合は、不具合画面のスクリーンショットを添付してください。

 要は、審査する担当者に、こと細かく操作手順を知らせる必要があるということだ。毎日膨大な数のアプリを審査しているのだから、ちょっとでも動かなければ、すぐにリジェクトするのであろうと思われる。「こうしてくれれば動くのに」とこちらが考えるのは甘い考えだ。その場合はコメント欄にきっちりと、その手順を書いておくことが望ましい。

4.1.1 アプリがネットワークに対応している場合はプライバシーに関する声明を用意しなければならない

 インターネットに接続するアプリの場合は、必ずプライバシー・ポリシーのページを表示する必要がある。チャームの中からプライバシー・ポリシーのページを表示させるようにする。コードの書き方などについては、別の回で詳細に解説する予定だ。

筆者のプライバシー・ポリシー・ページ

 このリンク先が、筆者の使用しているプライバシー・ポリシーのページだ。ブログを持っておられる方は、ブログ内にプライバシー・ポリシーのページを用意して、そこにリンクさせるといいだろう。

 このプライバシー・ポリシーへのリンクは、「チャーム」内で行う必要がある(次の画面を参照)。

チャームから「プライバシー ポリシー」へのリンクを表示した
チャームから「プライバシー ポリシー」へのリンクを表示した

プライバシー・ポリシーに関する注意点

 Windowsストアにアプリを申請する場合に、「説明」の項目に、プライバシー・ポリシーのURLを入力する欄があるので、忘れないようにURLを入力しておく必要がある。チャームからプライバシー・ポリシーへのリンクを張っていても、この入力欄にURLを入力し忘れると、リジェクトされるので注意が必要だ。

 プライバシー・ポリシーはインターネットに接続していない場合は、不要である。ただしWindowsストアのプロジェクトを作成した場合、ソリューション・エクスプローラー内のPackage.appxmanifestファイルを開くと、次のような設定画面が表示される。

デフォルトで「インターネット(クライアント)」にチェックが入っているので、外す
デフォルトで「インターネット(クライアント)」にチェックが入っているので、外す

 この設定画面では、デフォルトで[インターネット (クライアント)]チェックボックスにチェックが入っている。このチェックを外さずに、このアプリはインターネットには接続していないから、プライバシー・ポリシーは不要だ、と思って申請すると、間違いなくリジェクトされる。忘れずに外しておこう。

 以上が、これからWindowsストアにアプリを申請する際に気を付けるべき要点だ。実際、リジェクトをされた場合、最初はリジェクト理由があまりに漠然としているので、どう修正して再申請したらいいのか、戸惑うことが多い。実際に筆者もそうだった。「もう少し具体的に書いてくれ!」と何度、心の中で叫んだことだろう(-_-;)。しかし、何度も経験していくと、自然と分かってくるのも事実だ。その自然と分かってくる手助けに、この1回目の記事がお役に立てればうれしい。

 各認定の要件の詳細については、次回以降の回で解説する予定だ。お楽しみに。

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意
1. 【現在、表示中】≫ 極意1: ここがポイント、Windowsストアアプリ認定の要件

「Windowsストア向けのアプリ申請で、いかにしたら認定されるか」についてのノウハウを紹介する連載がスタート。今回は認定要件のドキュメントから注目ポイントを取り上げる。

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意
2. 極意2: タイトルの必要性、Splash Screen/画面の配色、etc.

Windowsストア・アプリの認定要件ではないが、Windowsストア・アプリの基本的な作法となっているUI/UX関連の注意点と、その実装方法を紹介する。

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意
3. 極意3: アプリの独特かつ独創的な価値または実用性について

Windowsストアアプリを申請して、認定されたアプリとリジェクトされたアプリの違いを紹介する。

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意
4. 極意4:プライバシー・ポリシーの必要性

「プライバシー・ポリシー・ページはどんなときに必要なのか?」「Windowsストア・アプリからどのような手段で表示すればよいのか?」について解説する。

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5. 極意5: カテゴリとサブカテゴリの選び方

「カテゴリやサブカテゴリだから適当でいいや!」と高をくくっていると痛い目に遭う。実際の経験を基に、カテゴリとサブカテゴリの選択指針をまとめる。

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