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VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意

極意3: アプリの独特かつ独創的な価値または実用性について

2013年8月2日

Windowsストアアプリを申請して、認定されたアプリとリジェクトされたアプリの違いを紹介する。

薬師寺 国安
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前書き ―― 今回の極意について

 Windowsストア・アプリの「MSDN: Windows 8 アプリの認定の要件」の最初に、「1.1 アプリは、サポートしているすべての言語と市場で、ユーザーに独特かつ独創的な価値または実用性を提供しなければならない」という一文がある。筆者の場合、この項目に抵触してリジェクトされ、最終的には申請を取り消したアプリが少なからずある。

 今回は、このWindowsストア・アプリの一番の基本となる要件のクリアについて、その極意を書いてみようと思う。

認定されたアプリとリジェクトされたアプリの違い

 では、フォルダー内の画像を表示させるアプリを例にとって、認定されたアプリと、この項目でリジェクトされ、最終的に申請を取り消したアプリを比較してみよう。

認定されたアプリ

 まず、ストアの審査に受かったのが「画像をY軸を中心に回転」というアプリだ(次の画像を参照)。

「画像をY軸を中心に回転」アプリ

 このアプリは、指定したフォルダー内の画像が一覧表示され、表示された画像の上をマウス・カーソルが移動すると、画像が次々とY軸を中心に回転を始めるというアニメーションを実装している。任意の画像をダブルタップすると回転しながら画像が大きくなって前面に表示される、というアプリだ。

リジェクトされたアプリ

 一方、リジェクトされたアプリは「フォルダーの画像を選択」というアプリだ(次の画像を参照)。

「フォルダーの画像を選択」アプリ

 このアプリは、指定したフォルダー内の画像がサムネイル表示され、任意の画像をタップすると、実寸大の画像が、起き上がるように表示されるアニメーションを実装したアプリだ。

2つのアプリの相違点

 これらのアプリの価値は、フォルダー内の画像を表示することにあるという点で明白だ。問題は「独創性」にあると筆者は考える。この2つのアプリにはアニメーションを使用しているが、そのアニメーションの独創性の違いで、認定とリジェクトに分かれたといえる。

 「画像をY軸を中心に回転」では、「一覧表示された画像の上をマウス・カーソルが移動することで、画像がY軸を中心に順次回転していくアニメーションが、独特かつ独創的である」と認められたのだろう。リジェクトされた「フォルダーの画像を選択」のアニメーションは、「どこにでもありそうな、ごく普通のアニメーションであって、特にこれといった独創性はない」と判断されたのだと思う。

リジェクトされたアプリの「認定レポート」

 「フォルダーの画像を選択」の不合格となった「認定レポート」には「お客様のアプリは、要件 1.1 を満たしていません。」と記述されている(次の画像を参照)。

このアプリには「価値と有用性が明確ではない」と記述されている

 この要件でリジェクトされた場合、再申請しても認定されるのは大変に難しい。筆者の、「フォルダー内の画像を選択」させるアプリは、価値と有用性を担当者にうまく説明できなかったし、同様の処理をするアプリを何点かすでに認定されていたため、今回は、アプリを削除して申請を取りやめた。

「審査担当者へのコメント」欄の利用

 しかし、この要件でリジェクトされても、次に紹介する「新版:時刻表示」アプリのように、再申請して認定される場合もあるため、この要件でリジェクトされたからといって、諦めなければならない、というのでは決してない。

 第1回目でも少し触れたように、この「新版:時刻表示」アプリは、Windowsストアが始まった当初に、「時刻表示」として申請したアプリで、最初の申請では問題なく認定された。しかし、数カ月後に機能を追加して「新版:時刻表示」として申請したところ、この要件でリジェクトされてしまった。

「審査担当者へのコメント」欄にアプリに対する説明を書く

 こういった場合に利用するのが、一番最後に記入する、「審査担当者へのコメント」欄だ。もちろん、申請したアプリの価値や有用性は、ユーザーにも知ってもらう必要があるため、「説明」の欄にも必ず記入しておく必要がある。ダウンロードする前に、「このアプリではどのようなことができ、ユーザーにとってどんな価値があるのか」を事前に知ってもらう必要があるからだ。「説明」欄にはわかりやすく、簡潔に書いておくのが望ましい。

 「審査担当者へのコメント」欄は、ユーザーの目には触れないコメントであるため、また4000文字までの入力が可能であるため、アプリに対する思いや、価値と有用性について、情熱を持って書きつづればいいだろう。極論すれば、話の筋を通して好き勝手に書いても問題はないと思う。言いたいことを全部書けばいいのだ。「こんなに素晴らしいアプリをなぜ認定してくれないのか? アプリを操作しただけで、価値や有用性は明白だと思う。」と書いても何ら問題はない。例えば筆者はこのコメント欄に次のように書いた。

 この「新版:時刻表示」は、「時刻表示」として公開していたアプリに機能を追加して、「新版:時刻表示」として申請したものです。「時刻表示」のアプリは、現在ダウンロード数が1500以上あります。これだけのダウンロード数があるということは、このアプリを必要とするユーザーが存在するということです。価値も実用性もないアプリなら、ここまでダウンロードされないと思います。1500以上のダウンロード数があるということは、ユーザーはこのアプリに価値と実用性を見い出している証しだと思います。

 すると無事認定された。この「新版:時刻表示」アプリの場合は、「時刻表示」というアプリで、ダウンロード数がある程度あった、という既成の事実が存在したため、上記のように書くことができ、認定もされた。では、そういった既成の事実もなしに、この要件でリジェクトされた場合に、何としてもこのアプリを認定してもらいたいときはどうすればいいだろうか。

「アプリの独特かつ独創的な価値または実用性」でリジェクトされたアプリの認定

 筆者はWindowsストアに「カメラで夏」というアプリも公開している(次の画像を参照)。

最初申請した際には、「このアプリには価値と有用性がない」という理由でリジェクトされた

 この「カメラで夏」というアプリは、Webカメラで写した写真の上に、夏のイラストを拡大・縮小して任意の位置に配置して合成保存するアプリだ。このアプリは第1回目に申請した際には、今回の要件でリジェクトされた。しかし、筆者はこのアプリを気に入っていたため、何としても認定してもらいたかった。そこで例の「審査担当者へのコメント」欄に次のように書いた(なお、以下に記述した有用性や使用用途については、簡潔に「説明」欄にも書いて、ユーザーに知っていただく必要があるのは、当然のことである)。

 このアプリの価値は、選択した夏の画像を、拡大・縮小して、Webカメラで写した画像の任意の位置に配置して、合成できる点にあります。リア・カメラ(=後方を写すカメラ)がWindows 8タブレットに搭載されていれば、風景を写し、それに続けて、その写真の中に夏の画像を配置して保存することもできます。写した画像にワンポイントとして、夏の画像を配置して保存し、印刷(このアプリには印刷機能はありません)などして部屋に飾っておくことができます。また、その画像を、近況を知らせるメールなどに添付して、友人・知人に送れば、きっと喜ばれると思います。その手助けをするアプリなのです。私のお気に入りのアプリの1つです。認定のほど、どうかよろしくお願いいたします。

 これで無事認定された。審査員も鬼ではない(-_-;)。アプリの価値と有用性をきっちりと伝えれば、意図をくみ取って認定してくれる。要は、「自分が申請したアプリに、どれだけの思い入れを持っているか」が、審査員に伝わることが大切なのだ。

 次に今回の認定の要件と若干関係のある、筆者が経験した悲惨な事件(?)と、その後の仕打ち(?)について「コラム」を書いた(-_-;)。「Windowsストアの審査では、こういったことも起こり得るのだ」ということを知っておいてほしい。

【コラム】申請したアプリが審査されない! 私のアプリ申請のどこがいけないの?

 すでにWindowsストア・アプリを申請した経験のある皆さんにお尋ねしたい。皆さんは、Windowsストアの審査が、意図的に1カ月以上もされなかった経験はあるだろうか? 筆者にはある。通常は1~3日で審査されるものが、1カ月以上経過しても審査がされないのだ! システムの不具合ではないことを付け加えておこう。

 筆者は現在、Windowsストアのアカウントを3つ持っている。決して好き好んで3つも持っているわけではない。恐らく日本で、個人で3つもアカウントを持っているのは筆者ぐらいではないだろうか(-_-;)。

 3つのアカウントを持たざるを得なくなったのには、それなりの理由がある。もちろん、最初は1つのアカウントしか持っていなかった。しかしWindowsストアのダッシュボードの不具合から、どうしても、もう1個、アカウントを取らざるを得なくなった。この件についての詳細な説明は省略する。

 3個目のアカウントを取らざるを得なくなったのには、それは、それは、大変な事件(?)があった。筆者は2つ目のアカウントを取ったとき、2つ目のアカウントに、一時、69個のアプリを同時に申請していたことがある。今になって考えると、「一度に69個のアプリの申請は常識外れであった」と後悔している。そして、この69個のアプリが、ある日突然、一括でリジェクトされてしまったのだ。理由は、今回のこの要件でのリジェクトだ。69個のアプリが全てこの要件に抵触してリジェクトされてしまった。

 2013年4月23日の午前中に、69個のアプリの一括リジェクトを知らせるメールが送られてきた(次の画像を参照)。焦ったのは言うまでもない。頭の中が真っ白になり、一時は何が起こったのか把握できなかった(-_-;)。

69個のアプリが一括でリジェクトされた

 もちろん、これら全てのアプリが審査されてリジェクトされたわけではない(と筆者は考えている)。風のうわさで聞いた話では、「1つのアカウントで大量にアプリを申請している場合は、類似性の高いアプリが何個も申請されている可能性があると判断され、抜き打ちでアプリを審査して、類似性があった場合は、ほかのアプリは審査せずに一括でリジェクトされる」というのだ。

 このリジェクト以来、私のアカウントがブラック・リスト(?)に登録されてしまったのかどうかは定かではないが、約1カ月以上全く審査がされなくなった。何の音沙汰もなく、全くの無視状態が続いた。そこで、仕方なく3個目のアカウントを取る羽目になった。当時、1個目のアカウントでは90個近くのアプリを公開し、2個目のアカウントでは50個近くのアプリを公開していた。アプリをたくさん公開しているうえに、1つのアカウントに69個ものアプリを一度に申請したものだから、どうも問題児(-_-;)扱いされ、審査がされなくなったようだ。また、最初に持っていた2個のアカウントは、同一人物だと分かったようで、2つのアカウントとも、全く審査がされない状況が続いた。

 これもうわさで聞いた話だが、「当時、各方面でWindowsストア・アプリのコンテストが開催されており、このコンテストのために、世界的に大量のアプリが申請され始めていた」ということも大きな原因の1つだったらしい。世界から、同時に大量のアプリが申請されれば、1個1個審査していたのでは審査作業が申請のペースに追い付いていかない。そこで、「1つのアカウントから同時に複数の申請がある場合は、そのいくつかを抜き打ちで審査し、その中に類似性の高いアプリがあった場合は、一括でリジェクトをする。この一括リジェクトは世界的に実行されたらしい」と話を小耳に挟んだ。

 これには参った。いろいろな方面に相談もし、アドバイスもいただいた(NDA(=秘密保持契約)扱いのアドバイスもいただいたが、もちろんその内容は、ここには書けない)。そこで「Windowsストアの審査には、優先順位というものが存在し、何らかの問題を起こした人物は、アプリ審査の優先順位が低くなる。これを解決するには、とにかく質のいいアプリを1アカウントごとに1個だけ申請して、認定されるまで気長に待つ、というのが最善の策だ。途中でキャンセルしたりすることは厳禁」と教えられた(最終的には、この対処法は間違っていたのだが……)。

 しかし、その教えを守っていても審査される気配は全くなかった。3個目のアカウントは、問題なく審査されていたので、そちらに1個ずつアプリを申請しては気分を紛らわせていた。2つのアカウントの無視状態が、あまりに長期に渡るため、「もうこれは自分で何とかするしか方法がない!」と決心をした。そこで、思いついたのが、例の「審査担当者へのコメント」欄を利用して直訴することだった。1アカウントに1個のアプリを申請していれば、アプリに目を通してはくれているはず、と判断して、「審査担当者へのコメント」欄に、以下のような画像の内容を書いたのだ。

審査員への直訴の内容

 このような文章で、「審査担当者へのコメント」欄に、自分の正直な気持ちを書いて、ぶつけてやった(-_-;)。審査されていないのだから、これで審査されるようになればもうけもの、という気持ちだった。

 これが功を奏したのか、それともペナルティの期間が過ぎたのか、理由は分からないが、2週間が過ぎたころ、突然に審査が再開された。それも全てのアカウントに対して審査が始まった。1カ月以上の空白が、まるで嘘のように、申請したアプリは早ければ1日、遅くても3日で審査されるようになった。もちろん、1アカウントに1個ずつしか申請はしていない。最近は筆者からの申請が(審査ペースに)追い付かずにうれしい悲鳴を上げている。

 審査が正常に戻る何週間か前に、事務局からいただいたメールでは、私の審査が行われなくなったのは、大量のアプリを申請し、キャンセルや再申請を繰り返したため、審査が「グループ審査」という部類に属し、審査が遅れてしまっていたらしい。ただ、今でも「グループ審査」という意味は理解できていないが(-_-;)。

 皆さんにも注意していただきたいのは、「1アカウントに1度に大量のアプリを申請してはならない」という点だ(まぁー、筆者のように69個ものアプリを申請する人はいないとは思うが……)。1アカウントに1度に申請するアプリの数は5個以内にとどめておいたほうが無難だろう。それと、「審査担当者へのコメント」欄には、直訴もできるといった意味で、この筆者の悲惨な(?)体験を紹介した。この情報が、読者の方々にとって、何かのお役に立てば幸いだ。

  • Windows 8の[検索]チャームで「ストア」を指定し、検索欄に、「kuniyasu」また「YakushijiKuniyasu」または「eightman」と入力すると、筆者の公開しているアプリの一覧を見ることができる。

 今回はこれで終わりだ。今回の1.1の認定要件は、要件項目の1番目に書かれているとおり、Windowsストア・アプリの基本中の基本となる要件である。よって、この要件でリジェクトされた場合は、再申請して認定されることは、筆者の場合に置いては非常に困難だった。

 しかし前述したように、自分のアプリに対する思いを審査員にきっちり伝えられれば、認定されることもあり得る。ただしそのためには、自分の作ったアプリの価値や有用性や実用性を、明確に伝えることが大切だ。この要件でリジェクトされたからといって諦めずに、アプリを作ったときの情熱と、同じくらいの情熱を持って、アプリに対する思いを伝えれば、きっと認定されると筆者は信じている。

 また、アプリを作る際にどれだけ大変だったかを、4000文字の中に含めるのも良い方法だと思う。審査員も人の子、「それだけしんどい思いをして作ったアプリなら、できるだけ認定してやりたい」という気持ちになって、より丁寧に審査してくる可能性もあるのだから。

 では、また次回の記事でお会いしよう。

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

VB開発者のためのWindowsストアアプリをリリースするための13の極意
1. 極意1: ここがポイント、Windowsストアアプリ認定の要件

「Windowsストア向けのアプリ申請で、いかにしたら認定されるか」についてのノウハウを紹介する連載がスタート。今回は認定要件のドキュメントから注目ポイントを取り上げる。

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2. 極意2: タイトルの必要性、Splash Screen/画面の配色、etc.

Windowsストア・アプリの認定要件ではないが、Windowsストア・アプリの基本的な作法となっているUI/UX関連の注意点と、その実装方法を紹介する。

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3. 【現在、表示中】≫ 極意3: アプリの独特かつ独創的な価値または実用性について

Windowsストアアプリを申請して、認定されたアプリとリジェクトされたアプリの違いを紹介する。

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4. 極意4:プライバシー・ポリシーの必要性

「プライバシー・ポリシー・ページはどんなときに必要なのか?」「Windowsストア・アプリからどのような手段で表示すればよいのか?」について解説する。

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5. 極意5: カテゴリとサブカテゴリの選び方

「カテゴリやサブカテゴリだから適当でいいや!」と高をくくっていると痛い目に遭う。実際の経験を基に、カテゴリとサブカテゴリの選択指針をまとめる。

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