ゼロから分かる電子工作の必須知識シリーズ(1)
電流と電圧 ― 電子工作を始める前の基礎知識
前知識ゼロだけど電子工作を始めたい人のための連載がスタート。電子工作に入門する前に知っておいた方がよい情報を分かりやすくまとめる。まずは電流と電圧を知ろう。
電子工作を始めたくてもその前段階の知識が不足していると、Web上の情報を見ても正しく理解ができないだけではなく、ちょっとした部品の特性により、出来上がったモノが正しく動作しなかったり、動作が不安定であったりする。
このシリーズでは、そういった電子工作入門以前の人がスタートラインに立つために知っておいた方がよい情報をまとめていきたいと思っている。
第1回目の今回は、電子工作の基礎中の基礎、電流と電圧について説明する。この知識があれば、「電圧は足りているけれど電流が足りなくて電子工作したものが動かない」という電気における初歩的なミスや勘違いが回避できるだろう。なお本連載では、電圧などの数値表現で使われる単位は[V]のように半角カッコで明示する。
電源のスペックとしての電流と電圧
電子工作を行うときに必ず必要になってくるのは電源だ。電源のスペックにはさまざまなものがあるが、その中でも重要なのは、電流と電圧のスペックである。
電流のスペック値は100[mA]のようにアンペア([A])が単位であり、電子工作では[mA]
(ミリアンペア)の表記が多い。もちろん、1[A]=1000[mA]である。
電圧のスペック値は3.3[V]のようにボルト([V])が単位であり、電子工作でよく使われるのは5[V]や3.3[V]もしくは1.8[V]などである。
例えば、電子工作に使うArduinoやNetduinoのデジタル出力は3.3[V]の出力電圧はあるが、出力電流は25[mA]程度である。一方、パソコンのUSBからの電源供給は5[V](仕様上は4.4~5.25[V])で100~500[mA]、モバイルバッテリーならば5[V]で1000[mA]や2100[mA]が確保できるものもある。図1はモバイルバッテリーのスペック表記例である。
それでは、電流と電圧はどのような関係にあるのだろうか。
電流と電圧の関係
電圧と電流の関係は分かりづらいので、ここでは、
- 電圧 → 滝の高さ([V])
- 電流 → 流れる水の量([A])
と考えてみよう(図2)。
例えばNetduinoのデジタル出力ピンは、25[mA]の水量が3.3[V]の高さから流れ落ちる滝だと考えてほしい。
それでは、この滝で回せるのはどんな水車だろうか。
まず、水車は3.3[V]の高さから落下してくる水の圧力に耐えられる丈夫さが必要だ。例えば1.8[V]などのより低いスペックでは水車の羽が壊れてしまうだろう。一方、5[V]などのより高いスペックでは丈夫すぎて3.3[V]程度の水圧では回らないことになる。
なお、電圧と違って電流の値は「最大値」なので、1000[mA]の水量が出せる滝であっても100[mA]しか必要としない水車を設置したときには100[mA]しか流れない。もし、100[mA]しか流れないはずなのに1000[mA]流れてしまうとしたら、どこかが壊れていて過電流が流れている状況なので(機器や電子回路が壊れてしまうため)、すぐに電源を落とした方がいいだろう。
電力=電流×電圧
各家の分電盤にあるブレーカーには40Aのような表記がある(図3)。40[A]とは、電力会社との契約によって定められた値であり、40[A]以上の電流が流れた場合、ブレーカーが落ちて電力の供給がストップすることを意味する。
一方、電気製品のスペック値には「電力が○○[W](ワット)」という表記がある。これは消費電力であり、「どれくらい電気を使うか」を表している。日本の場合、家庭用には100[V]が供給されているので、例えば100Wの電球であれば、
という計算になり、1[A]の電流が流れることになる。
このことから、40[A] のブレーカーがある場合、その家で使える家電製品の総ワット数は、
という計算になり、「一度に4[kW]までの電化製品が使える」ということになる。例えばエアコンであれば、8畳用で500[W]くらいなので「8台くらいまでは一度に使える」という計算になる(ただし冷蔵庫も何も使っていない条件の下だが)。
実はワットは、ボルトやアンペアのような電気の単位ではなく、仕事量の単位だ。だから、500[W](8畳用)のエアコンと1000[W](16畳用)のエアコンでは冷やせる部屋の大きさ(=仕事量)が異なることになるわけだ。
まとめ
「PCからのUSB給電で電子回路を試していて、最終的にNetduinoから給電してみたら動かなかった」という話はときどき聞く。最近はハードウェア込みのハッカソンやコンテストなども多くなってきており、もうすぐ締め切りというときにこういう事態に陥ったらかなり焦るだろう。
電子工作をやっていると「一度は通る道」みたいなものではあるが、今回の説明を思い出してもらえれば、どうしてそういうことになったのか、どう回避すればいいのかが見えてくるのではないだろうか。
次回は電子工作の電源として使うことも多い電池について解説してみたいと思う。
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