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ゼロから分かる電子工作の必須知識シリーズ(3)

ゼロから分かる電子工作の必須知識シリーズ(3)

抵抗 ― 電圧と電流をコントロールする

2016年10月25日 (2016/11/07 更新)

電子工作で回路図を組むには抵抗は避けて通れない。抵抗の役割と意味をきちんと理解し、自分自身で抵抗値を計算して適切な抵抗を選択できるようになろう。

Microsoft MVP for Windows Platform Development 初音 玲
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 このシリーズでは、電子工作入門以前の人がスタートラインに立つために知っておいた方がよい情報をまとめていきたいと思っている。

 第3回目である今回は、電子工作するうえで身近な抵抗を取り上げる。抵抗は光るわけでも音が鳴るわけでもないので、電子工作入門以前の人にとっては存在理由も目的も謎だ。回路図のその場所になぜ抵抗があるのかが分からなくても回路図通りにすれば電子工作はできるが、それを参考にして別の回路を組もうと思ったときに、たくさんある抵抗からどれを選択すればいいのか見当がつかないという事態も招く。

 今回は、抵抗の役目を説明し、自分の意図した結果を得たいときの抵抗値の計算方法が理解できるようにしたい。

そもそも抵抗とは

 抵抗、もう少しきちんというと電気抵抗は、1826年にオームにより発見され、翌年にオームの法則(下記の計算式)として発表された。

電位差V = 電気抵抗R × 電流I

 そして、このオームの法則に則した性能を有した電気抵抗素子を使って製品化したものが抵抗器だ。

 余談ではあるが、オームの法則の発表当時にはまだ電子は発見されておらず(電子の発見は1897年)、オーム自身も電圧と電流の間に比例係数として抵抗というものの存在を定義したが、その理由まで説明できず、異端な学説として正当な評価を受けられなかったそうだ。

抵抗器の種類

 抵抗器には、

  • 固定抵抗器
  • 可変抵抗器
  • 半固定抵抗器

などがある。また、固定抵抗器には抵抗体の種類によりさまざまなものがあるが、電子工作に使われるのは炭素皮膜抵抗器金属皮膜抵抗器だ。各種抵抗器について説明しよう。

固定抵抗器(炭素皮膜抵抗器)

 部品ごとに決められた抵抗値となっている抵抗器の中で、セラミックの円筒表面に抵抗体である炭素の被膜が焼き付けられたものを炭素被膜抵抗器と呼ぶ。炭素皮膜抵抗器の精度誤差は5%程度であり、電子工作で使う抵抗(図1はその例)はこの炭素皮膜抵抗器のことだ。

図1 炭素皮膜抵抗器

efを、2468の4カ所で接続しているのが抵抗器。

固定抵抗器(金属皮膜抵抗器)

 金属皮膜抵抗器は、炭素皮膜抵抗器と外見や機能は似ている。しかし、抵抗体にニッケルクロム合金などの金属を使っているため、固体誤差が小さく(誤差1%程度)、温度による抵抗値の変化も少ないという特徴がある。炭素皮膜抵抗器よりも1.5~2倍の価格差がある。電子工作ではあまり使われないがオーディオ回路などに使われている。

可変抵抗器

 固定抵抗器と異なり、抵抗値を変えることができる抵抗器を可変抵抗器という(いわゆるボリューム)。図2は可変抵抗器の例である。

可変抵抗器
図2 可変抵抗器

半固定抵抗器

 頻繁に変更はしないが例えばセンサーの感度などを微調整するのに抵抗値を可変にしたいときに使用するのが半固定抵抗器だ。図3はその例である。

半固定抵抗器
図3 半固定抵抗器

カラーコードを読み解こう

 抵抗器のスペックには、抵抗値(単位は「Ω:オーム」)、定格電力(=何Wまで電力を消費できるのか)(単位は「W:ワット」)、耐電圧(単位は「V:ボルト」)などがある。スペック表などには例えば、「1.5Ω 1/4W 250V」のように記述される。

 実際に抵抗器を使用する場合は、定格電力まで流してしまうと抵抗が壊れてしまう可能性があるので定格電力の半分くらいで使う。定格電力1/4[W]ならば実際に使用するときは1/8[W] 0.125[W]が目安となる。

 定格電力や耐電圧は抵抗自体に記載はない。これは定格電力や耐電圧がばらばらの抵抗を一度に使うことはほぼないからだ。よって、もし、定格電力や耐電圧のスペックが異なる抵抗を購入した場合は、袋を分けるなど後から分かるようにする工夫が必要だ。一方、抵抗値については抵抗自体にカラーコード(表1)として記載がある。

数値 乗数 許容差
0 1 -
1 10 ±1%
2 100 ±2%
3 1K ±0.05%
4 10K -
5 100K ±0.5%
6 1M ±0.25%
7 10M ±0.1%
8 100M -
9 1G -
- 0.01 ±10%
- 0.1 ±5%
表1 カラーコード

10進法において、単位K(キロ)は10の3乗1,000(千)、M(メガ)は10の6乗1,000,000(100万)、G(ギガ)は10の9乗1,000,000,000(10億)となる。

 図1の1つの抵抗を拡大してみたのが図4だ。

カラーコード
図4 カラーコード

 色の帯が、左から「茶」「黒」「茶」「金」と並んでいる。最後の2つは乗数と誤差を表すので、このカラーコードの意味は「1」「0」×「10」誤差「5%」100Ω±5%の抵抗を意味する。

 このように炭素被膜抵抗であれば誤差は5%程度なので、金色を右側になるようにおいて左から読んでいけばよい。ちなみに、最近の炭素皮膜抵抗にはカラーコードの発色が悪くて、どの色かが分かりづらいものもある……。そのような場合、だいたいアタリを付けたら、テスターで抵抗値を測って、想定した値で間違いないかを確認すればよいだろう。

 試験ではないのだから、カラーコードを全部暗記する必要はない。抵抗が必要な抵抗値を持つかを判別して、適切な抵抗を選択できることが重要なのだ。

抵抗値グループ

 抵抗は単価が安く、またいろいろなところで使うため、ネット販売などでは100本セットやさまざまな抵抗値をセット売りしていたりする(それでも100本800円とかだ)。セット販売では「E24系列」のように含まれている抵抗値のグループを表記しているものもある。

 E24系列とは、JIS C5063で定義されている標準数列のE24に準拠した抵抗のセットで、部品のばらつきが5%以内の製品で使われる場合が多い。

 E24系列の抵抗値は「10、11、12、13、15、16、18、20、22、24、27、30……100、110……1.0K、1.1K……10K、11K……」(Ω)のようになっており、ときどき歯抜けがある。この抜けたところには、抵抗を直列に接続したり、並列に接続したりして必要な抵抗値を回路に組み込む。これを合成抵抗と呼ぶ。

直列接続の合成抵抗

 抵抗を直列に接続した場合の合成抵抗は、抵抗の合計値となる。

図5 直列接続

 図5のように接続した場合、次のような計算式となる。

合成抵抗R = 100[Ω] + 150[Ω] = 250[Ω]

並列接続の合成抵抗

 抵抗を並列に接続した場合の合成抵抗は、それぞれの抵抗の逆数の和の逆数となる。

並列接続
図6 並列接続

 図6のように接続すると、次のような計算式となる。

合成抵抗R = 1/(1/(100[Ω])+1/(150[Ω])) = 1/(0.01+0.0066) = 1/0.0166 = 60[Ω]

抵抗の役目は電源の調整役

 もう一度、オームの法則に注目してみよう。

電位差V = 電気抵抗R × 電流I

 ある電子回路に対して電源が一定の電圧を供給するのであれば、抵抗が大きくなれば電流が小さくなり、抵抗が小さくなれば電流が大きくなる。この特性を利用すると、所定の部品に対して電源電圧とは異なる電圧を供給したり、電流を必要な大きさに制御したりできる。

必要な電圧に調整する

 次回に説明予定のLED(発光ダイオード: Light Emitting Diode)を使ってLチカをしたいとしよう。Lチカとは、最も簡単な電子回路で、コンピューター言語でいうところの“Hello World”のようなものだ(※2016/11/07更新: 本章全体を修正しました。詳しくは本稿末尾の更新履歴を参照してください)。

 LEDは標準電圧が決まっている。あるLED製品のデータシートの「Electrical-Optical Characteristics」(電気的・光学的特性)という表には(表1に引用)、「VF(Typ)=2.0V(IF=20mAの場合)」のような記載がある。VF(Typ)というのが標準電圧である。つまり、LEDを光らせるために20[mA]の電流を流したとき、電圧は概して2.0[V]になる、ということだ。このような仕様のLEDを使う場合、乾電池1個の1.5[V]では電圧が低すぎ、乾電池2個の3[V]では電圧が高すぎるということになる。

あるLED製品のデータシートの該当箇所を引用

表1 あるLED製品のデータシートの該当箇所を引用

 3[V]の電源を使い、LEDに2[V]の電圧がかかるようにするには、先ほどの直列の合成抵抗と同じように考えて、全体で3[V]のうち、抵抗で1[V]を使い、LEDで2[V]を使うような回路を組む。このとき、LEDに流す電流は前述のIFすなわち20[mA]とする必要がある。

 以上を計算式にすると次のようになる。

電位差3[V] = 合成抵抗R × 電流0.020[A]

 必要な合成抵抗を求めるために、オームの法則の公式を次のような式に少し変形する。

合成抵抗R = 電位差3[V]/電流0.020[A] =150[Ω]

 LEDに2[V]の電圧をかけたときに20[mA]の電流を流したいときは、上記の式を使って、以下の式のようにLEDの標準電圧の2[V]と抵抗の1[V]に分けて抵抗値を計算する。

合成抵抗R = 100[Ω] = 電位差3[V]/電流0.020[A] = 電位差2[V]/電流0.020[A] +電位差1[V]/電流0.020[A] = 100[Ω]+50[Ω]

 すると、LED自体の抵抗値は100[Ω]となるので、必要な抵抗の値は、150-100=50[Ω]となる。

必要な電圧に調整する
図7 必要な電圧に調整する

LEDに仕様上の電流値20[mA]を流しつつ、電圧が2[V]になるようにするには、3[V]の電池に対して50[Ω]程度の抵抗を直列に挿入する必要がある。この例では、手持ちの抵抗から47[Ω]を選択した。

 このように、抵抗と他の部品を直列につないだ回路では、回路全体に同じ電流が流れ、抵抗値により部品にかかる電圧が調整できる。

 また、算出した抵抗値を複数の抵抗を使って合成抵抗が算出値ピッタリになるように組んでもいいが、算出値から少々外れる手持ちの抵抗を使うくらいのアバウトさでも電子工作は成立する(もちろん絶対に超えてはいけない「しきい値」も存在するが、そのあたりは次回のLEDの解説で触れたい)。

必要な電流に調整する

 それでは、電圧を調整するのではなく、ある部品に流れる電流を制限したいときはどうしたらよいだろうか。

 電源電圧2[V]、回路全体に流れる電流が30[mA]だったとき、20[mA]10[mA]に電流を分ける場合を検討する。

 2[V]20[mA]10[mA]が流れる抵抗値をまず計算してみる。以下のようになる。

抵抗R1 = (電位差2[V])/(電流0.020[A]) = 100[Ω]
抵抗R2 = (電位差2[V])/(電流0.010[A]) = 200[Ω]

 電圧を変えずに電流値を分けたいときには、抵抗を並列に配置する(図8)。

必要な電流に調整する
図8 必要な電流に調整する

2[V]20[mA]10[mA]が流れるように、2つの抵抗値を並列に配置した場合の回路図。

 これで、R1側には20[mA]が、R2側には10[mA]の電流が流れる。

 検算(=計算結果が正しいか確かめること)してみよう。

 電圧2[V]30[mA]が流れる抵抗の値を次のように計算する。

抵抗[R] = 電位差2[V]/0.030[A] = 66.6[Ω]

 R1+R2の合成抵抗値を次のように計算して、先ほどと同じ66.6[Ω]であれば、正しい回路だといえる。

合成抵抗R = 1/(1/(100[Ω])+1/(200[Ω])) = 1/(0.01+0.005) = 1/0.015 = 66.6[Ω]

 このように抵抗の並列回路の考え方をすれば電流の分流が可能になる。

まとめ

 合成抵抗を使って必要な抵抗値の回路を組んだり、抵抗を使って別の部品が必要としている電圧や電流に調整したりする方法を紹介した。この考え方が分かると、回路図の抵抗がどんな意味で入っているかが理解しやすくなる。次回は今回取り上げたLEDに代表されるダイオードについて注目したい。

【更新履歴(お詫びと訂正)】

2016/11/07

 「必要な電圧に調整する」の章で、リンク先のデータシートにある表から引用した値が「IF=30mA」となっていましたが、「IF=20mA」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。この値変更の影響で、章全体の式や文章を修正しました。

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