jQuery逆引きリファレンス
thisキーワードの参照先を固定するには?($.proxy)
文脈により変化するthisキーワードの参照先を、$.proxyメソッドにより固定する方法を説明する。
JavaScriptにおけるthis
は、中級者以上になっても間違いを引き起こしやすい、中々に厄介なキーワードです。というのも、this
は「文脈によって参照先が変化する」という性質を持つためです。まずは、具体的な例を見てみましょう。
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="UTF-8" />
<title>jQuery TIPS</title>
</head>
<body>
<form>
<input type="button" id="btn" value="実行" />
</form>
<script src="https://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/3.1.1/jquery.min.js"></script>
<script>
$(function() {
var obj = {
name: '山田理沙',
address: '青森県小金井市大津9-78-423',
toString: function() {
console.log(this.name + '::' + this.address);
}
};
// clickイベントリスナーとして、obj.toStringメソッドを登録
$('#btn').click(obj.toString);
});
</script>
</body>
</html>
|
ボタンをクリックしたときに、オブジェクトobj
のtoString
メソッドを呼び出しなさい、という意味のコードです。この例であれば、obj.name
/obj.address
の値を基に「山田理沙::青森県小金井市大津9-78-423」のような文字列をログ出力することを期待しています。
しかし、得られる結果は「::undefined」。this.name
やthis.address
が意図したように、obj
のプロパティを参照できていないのです。
これが「文脈によって参照先が変化する」と言った意味です。オブジェクトobj
の配下では、this
はオブジェクト自身を表します。しかし、イベントリスナーの配下では、this
はイベントの発生元、ここでは<input>
要素を表すのです。要素オブジェクトはaddress
プロパティを持ちませんし、name
プロパティは(存在しますが)空なので、結果として空文字列+「::」+undefinedを返すわけです。
このような場合に、this
の参照先を変更する(=固定する)のが$.proxy
メソッドの役割です。
[構文]$.proxyメソッド
$.proxy(func, context [,args])
- func: 対象となる関数
- context: 引数
func
の中でthis
となるオブジェクト - args: 引数
func
に渡すパラメーター(可変長引数)
リスト1の例であれば、太字の部分を以下のように書き換えてみましょう。
$('#btn').click($.proxy(obj.toString, obj));
|
これでイベントリスナーの中でもobj.toString
メソッド配下のthis
がobj
を指すようになりました。確かに「山田理沙::青森県小金井市大津9-78-423」のような結果を得られることを確認してください。
API:jQuery.proxy() カテゴリ:Events(イベント) > Event Handler Attachment | Utilities(ユーティリティ)
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第56回~第60回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
57. 既存の要素をコピーするには? ― cloneメソッド
既存の要素をjQueryオブジェクトとして複製する方法を説明。オブジェクトはappendToなどの挿入系メソッドを使ってHTMLソース内に要素として追加したりできる。
59. 一般的なAjax通信を実装するには?($.ajax)
非同期通信の動作をより細かく制御したい場面で使える$.ajaxメソッドの構文と利用可能なパラメーター群の概要を紹介。簡単なサンプルで使い方を説明する。
60. 非同期通信のキャッシュを無効化するには?($.ajax[cache])
Ajax通信の結果をキャッシュするか否かを制御できる「$.ajaxメソッドのcacheパラメーター」の基本的な使い方を説明する。