Build Insiderオピニオン:高岡大介(3)
もっと自由な働き方があるんじゃない? 父親だって育児したい!
子供が産まれて育児に関わるようになった経験から、ITエンジニアの多様な働き方を考える。
初回のコラムでも少し触れましたが、私の目下最大の関心事の1つに育児があります。
もともと子供は好きでしたので、きっと子煩悩になるだろうなと予想はしていましたが、実際に産まれてくるとそのかわいらしさは想像をはるかに超えていました。
短い手足をバタバタと興奮気味に振って、キャッキャと楽しそうに遊んでいる姿。小さな口にもかかわらず精いっぱい大きく開けてあくびをする様。眠くてたまらないのに、頑張って起きようとするけどやっぱり眠くてがくっと首が落ちる瞬間。目覚めたときに一瞬不安だけど、隣に親がいるのを見付けて安心して見せる笑顔。
これはもう外で長時間拘束される仕事なんかやっている場合ではない。一刻も早く帰って子供の面倒を見なければ! 一緒に居て子供の成長を見届けたい。いや、むしろ居なくてはいけない。と、いう思いが募るのでした。
というのは冗談としても、実際問題、われわれのような共働き夫婦では夫の育児参加が必須です。核家族化の現在、片方だけによる子育ては負担が大きく家庭の危機を招きかねません。男性の育児参加というと、サポートするという考えが、当事者意識が欠けている、と何かと炎上しがちですが、そもそも帰りが遅すぎて平日はほとんど関われていないのではスタート地点にも立てません。
そういうわけで、積極的に育児に関わりたいのですが、障壁になるのがやはり仕事の拘束時間が長いことです。いっそ仕事をやめて専業主夫となる!というのはさすがに極端だし、ましてや夫婦2人で無職というわけにもいかない。何とか私の要望(欲望)を満たすための良い方法はないものか。
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そこで、思い切って働き方を変えました。
ちょうどその時期は、朝から夜遅くまで外で働いていたのですが、まずその案件を見直しました。いきなり抜けることは難しいため、リモートでのサポート中心にさせてもらいました。そして、新たに自宅に持ち帰りできる仕事をメインに切り替えました。それに加えて複数の小案件を組み合わせることで、収入は大きく減らすことなく、平日昼間の自由時間がかなり確保できたのでした。
もちろん自宅中心とはいえ仕事はあるため、ずっと子供と遊んでいるわけにはいきません。それでもやはり自由になる時間が多くなったことで、これまで以上に育児に関わることができています。どうしても昼間は育児に時間が取られる分、子供が寝た夜や早朝に時間を作って自分の仕事をするようにしています。
事情によって仕事の形態を自由に変更できるのは、まさにフリーランスの醍醐味(だいごみ)ですね。こんな私の都合に合わせていただいたクライアント各社様は本当に素晴らしい企業です。ありがとうございます。
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ワークライフバランスやダイバーシティと言われて久しいですが、実践するのはなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。
男性の育休制度などもあるところにはありますが、実際あまり活用はされていないようです。ライフステージに応じて働き方をアレンジできれば、もっと男性による育児も進み、大局的に見れば少子化対策にもなり得ると思っています。
働き方の多様化として、古くはダニエル・ピンクのフリーエージェント時代の到来、ドラッカーのネクストソサエティ、最近ではノマドライフ、モジュール型など時代と共に名前を変えて提唱されています。いまさら私が言うこともありませんが、そういった多様な働き方がこれからの社会ではますます求められていくでしょう。
何もフリーランスになることを勧めているわけではありません。ましてや会社勤めを批判しているわけでもありません。状況によって柔軟に働き方を変更できることが重要なのです。
私の場合、たまたま育児がきっかけでしたが、別に育児だけに限った話ではありません。親の介護であったり、自身の病気が理由になったりすることもあるでしょう。また、そういった家庭の事情的なものだけでなく、新しい分野への挑戦やキャリアアップを目指して働き方を変えることも十分あります。
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インターネットが当たり前になった今日、普段からネットを駆使しているわれわれITエンジニアこそ、そういった多様な働き方を実現しやすいのではないでしょうか。通常の仕事でもコードはGitHubなどオンラインリポジトリで共有し、タスクや課題はチケット管理システムで管理しています。ちょっとした会話ならテキストメッセージサービスでやりとりしますし、直接話す場合もSkypeやハングアウトでまかなえます。成果さえ出せれば、時間や場所の制約に縛られる必要はそれほど多くありません。
実際、そのような働き方をする人が増えているように感じます。エンジニアのBlogなどでもよく目にしますし、私の周りでも会社勤め、フリーランスを問わず、自由な働き方を選択する人が多くいます。ネットが可能にする新しい働き方を、私たちエンジニアが主導して実践する時代が来ています。
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親ばかの話から、ずいぶん大きな話しまで飛躍してしまいました。大風呂敷を広げましたが、リモート(自宅)で仕事をするということの課題なども実は沢山あります。次回はそのあたりについて触れてみたいと思います。
高岡 大介(たかおか だいすけ)
大手外資系企業でエンタープライズシステムの開発、国立研究所にてセマンティックWeb/オントロジー関連の研究に従事し、 技術顧問、開発、執筆、講演などITに関する仕事に広く携わる。
2015年より取締役 兼 最高技術責任者(CTO)として株式会社オープンウェブ・テクノロジーにジョインし、TechFeedを開発。Webフロントエンドだけでなく、バックエンド、インフラなどシステム全体に関わる。
AITC運営委員(エバンジェリスト)、Sencha UG共同運営者などのコミュニティ活動、 HTML5Exports.jp エキスパート、Build Insider オピニオンコラム執筆など。
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
5. なぜ僕たちはこんなにもIoTに魅せられるのか
「あちら側」と「こちら側」。『Web進化論』から10年近くが過ぎようとしている中で、IoTによってネットとリアルの関係はどう変わろうとしているのか。