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Build Insiderオピニオン:小川誉久(6)

Build Insiderオピニオン:小川誉久(6)

「一億総ニュース耳ダンボ時代」について考える

2015年6月23日

インターネットやデバイスの進化により、いつでもどこにいても最新情報にアクセスできるようになった。でも、それっていいことばかりなの?

小川 誉久
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 2015年6月8日に開催されたアップルの開発者向けカンファレンス(WWDC 2015)において、iOSデバイスで利用できる無料のニュースリーダー「News」が発表された。何でもこの「News」は、過去に読んだ記事から利用者の好みを学び、関心に合った記事を紹介してくれるのだとか。

 FacebookもFB Newswireとかいうニュースサービスを始めたようだし、Google NewsやFlipboard、日本国内向けだとYahoo!ニュースやスマートニュース、グノシーなんかもあって、ニュースサービスまわりはにぎやかになる一方だ。

 確かに今の世の中、いつ何が起こるか分からない。世の中の流れに乗り遅れて損をするのはいやだ。スマホとインターネットがあれば、いつでもどこでもニュースにアクセスできるわけだから、ついついチェックしてしまうのは人情というものだろう。しかも、自分で思い出してチェックしにいかなくても、メールやTwitter、Facebook、LINEなどのサービスを通じてじゃんじゃん連絡がくるし、最近ではそれがスマホだけでなくウェアラブルデバイスを通してブルブルくるときている。

 ひとたびニュースが報道されれば、瞬く間に国民の知るところとなる。何というか、かつての「一億総中流時代」に代わって、「一億総ニュース耳ダンボ時代」がやってきたようだ。

 でもふと思う。私たちはそんなにニュースに敏感になる必要があるのだろうか、と。

 特に、このコラムの読者であるエンジニアの皆さんの価値を高めるのは、仕事の品質だろうと思う。ニュースをいち早くキャッチしたとして、皆さんのエンジニアとしての仕事の品質は上がるのだろうか。

 この意味では、浅く広く早くニュースをキャッチすることに時間を割くよりも、一冊の技術書でもじっくり読んで、自分でしっかり考える方がはるかに役に立つのではと思う。

 私が問題だと思うのは、こうした何かに「じっくり時間を使う」ことが、さまざまなネットの割り込みによって年々難しくなってきていると感じることだ。

 私自身、時間をかけて苦しみながら本を読んでいるときに、何か割り込みでもあろうものなら、喜んで浮気してそのままどこかへいってしまうことが多い。考えるというのは本当につらい作業で、一方、次々と流れてくるニュースやメールなどを無責任に斜め読むのは気楽なことだ。だからつい、つらいことを中断して、気楽なことに逃げ込んでしまう。

 こうなってくると、品質の高い仕事ができるエンジニアの条件は、ネットから迫りくる割り込みの誘惑をはねのけて、集中して考える時間を意識的にブロックできるかどうかなのではないかさえと思える。

 ニュースサービス花盛りの今、つらい原稿書きから何度もニュースやメールやSNSの割り込みに逃避しながら、そんなことを考えた。

小川誉久(おがわ よしひさ)

小川誉久(おがわ よしひさ)

(株)デジタルアドバンテージ代表取締役。

カシオ計算機でUNIX系システムの開発に3年間従事し、その後アスキー出版局に転職。書籍『プログラミングWindows』の編集を皮切りに、マイクロソフト系技術書の翻訳編集を手がける。1989年、月刊スーパーアスキーの創刊に参加。WindowsやPC/AT互換機に関する記事を担当した。2000年に独立してデジタルアドバンテージを創立。

現在は@ITでの情報サイト運営、Build Insiderの運営に加え、2010年からはGPSを活用した地図系スマートフォンアプリの開発にも携わっている。

 

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第2回~第6回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

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2. 波に乗っていこう。でも小さな波も起こそう

世の中のどんな大波も、元をたどっていけば1人の人間の想像力にたどり着くはずだ。ひとりひとりはちっぽけな存在でも、小さなさざ波くらいは起こせる。

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3. Chromebookか、Windowsか

「The Network is the Computer」。これはかつてSun Microsystemsが掲げたスローガンだ。そして、まさにネットワークがコンピューティング環境となる時代が到来しようとしている。

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4. 年のはじめに「3分間トイレ学習法」

文章を書くときに役立つボキャブラリは、どうやって増やせばよいのか? 実践してみて実際に効果があった方法を紹介する。

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5. 「ドキュメントは構造が第一」な編集者体験

前回の「3分間トイレ学習法」にそこそこ人気があったようなので、筆者がまだ駆け出しの編集者だった20年以上前のお話をもう1つ。

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