Build Insider Survey【2017年1月実施】
技術トレンド調査: AWSとAzureを猛追するGoogle Cloud Platform、徐々に人気を高めるReact NativeとApple Watch
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。2017年度前半はこれらに注目しよう。
「開発者/Web制作者はどんなアウトプット手段を使っているのか? その頻度は?」では、今回の調査テーマである「開発者のアウトプット」に関して、新技術に取り組む姿勢や、アウトプット手段/頻度についての結果をランキング形式で発表し、さらに各エンジニアが大事にしているキーワードやアドバイスを紹介した。本稿は、同じアンケート調査の残り半分を基にした記事で、「Web(JavaScript)」「デバイス」「スマートフォン」「IDE」など、より幅広い開発技術やツールについて「本当に人気があるのは何か」を明らかにしている(※ちなみに、本稿と同じ質問内容のアンケート調査を毎年春と冬に実施している。この定点観測により、技術トレンドの推移を浮き彫りにしたいと考えている)。
- 第1回(2014年4月)の結果
- 第2回(2014年10月)の結果
- 第3回(2015年4月)の結果
- 第4回(2015年11月)の結果
- 第5回(2016年6月)の結果
- 第6回(2017年1月)の結果(本稿)
アンケート結果の印象をまとめると、全体的にはWeb技術の人気が再びやや高まっているように感じた。また、出遅れていたGCP(Google Cloud Platform)がついにAWS&Azureの2トップを猛追し始めている。この他、データベースとしてRDBMSが盤石な地位を確立する一方で、NoSQLのRedisやMongoDBも少しずつ定着してきているという印象を持った。開発用エディターのVisual Studio Codeの人気は依然として高い。
それでは、さっそく各技術の人気ランキングを発表していこう。
- 開発技術全体の動向: 技術領域の人気傾向
- 各種アプリの開発技術: Web開発技術/スマートフォン開発技術/デバイス技術
- 各種アプリを支える技術&ツール: クラウドプラットフォーム/データベース&ストレージ/IDE(統合開発環境)&開発者向けテキストエディター
開発技術全体の動向
まずは、どういった技術領域の人気が高いかをチェックしよう。
技術領域の人気傾向
本アンケート調査では、開発領域を大きく下記の10種類に分けた。50%以上となった上位の4つは以下の通り。
- 1Web制作/Webデザイン/Web開発
- 2プログラミング言語/スクリプト言語
- 3クラウド開発・運用
- 4スマートフォン/タブレット/ウェアラブル端末開発
前回と比較すると、順位に少し変動があった。前回2位の「Web開発」は12ポイント増で1位に、「プログラミング言語」は5.5%減で2位になった。Webが少し上がったためか「クラウド開発・運用」も4位→3位にアップした。前回3位の「次世代デバイス/IoT開発(KinectやHoloLens、Raspberry Pi、Arduinoなど)」は、HoloLensが入手できるようになり期待から現実に変わってきたためか、4.7ポイント減で5位に転落した。
各種アプリの開発技術
Web開発技術
JavaScriptライブラリ/ツールの中で、実際のプロジェクトでの利用意向が高い(=「使いたい」が40%以上の)ジャンルは、以下の通りだった(上位4つ)。
- 1MV*などの各種フレームワーク(ReactやAngularなど)
- 2altJS(JavaScript代替。TypeScriptなど)
- 3UIライブラリ(jQuery UI、Bootstrapなど)
- 4JavaScript パッケージマネージャー(npmやBowerなど)
前回と比較すると、「UIライブラリ」が1位→3位に転落した(14.7ポイント減)。それ以外、大きな変化はない。
・グラフ上の選択肢名が省略されている6位以降の項目:「JavaScript テストツール(Jasmineなど)」「タスクランナー(gulp.js、Gruntなど)」「DOM操作(jQueryなど)」「CSSプリプロセッサー(CSSメタ言語。Sassなど)」「Webグラフィックス/データ可視化(three.js、D3.jsなど)」「UIコンポーネント(Web Components)」「ユーティリティライブラリ/データ操作(lodashやUnderscore.js、Linq.jsなど)」「モバイルフレームワーク(jQuery Mobileなど)」「WoT(Web of Things: IoTをWeb技術で実現)」「JavaScriptライブラリ/ツールは不要」。
・「その他」の具体的な内容例: 「asm.js 関連」など。
スマートフォン開発技術
スマートフォン開発の技術としては、Swift/Java言語などを使ったネイティブアプリ開発だけではなく、C#やHTML5+JavaScript言語などを使ってマルチプラットフォーム対応で開発する技術の人気が高まっている。人気順は以下の通りだった(上位7つ)。
- 1Xamarin(C#)
- 2Unity(C#/JavaScript)
- 3Cordova/Monaca(HTML5)
- 4Windows 10 Mobile/UWP ネイティブ (C#/Visual Basic/JavaScript)
- 5React Native(JavaScript)
- 6iOS ネイティブ(Objective-C/Swift)
- 7Android ネイティブ(Java)
本サイトの特徴としてC#開発者の読者が多く、その結果がある程度、ランキングに影響していることをご了承いただきたい。こういった事情もあり、前回に引き続きXamarinが1位で大きな変動はなかった。しかし前回2位の「UWP(Windows 10 Mobile含む)」が17.9ポイント減で2位→4位にランクダウン。UWP関連の技術からはC#開発者も離れていっている様子がうかがえる。
今回目立ったのは「React Native」の7位→5位の上昇だ。まだ「Cordova」の方が上だが、今後、さらに成長するか、注目したい。
・グラフ上の選択肢名が省略されている7位以降の項目:「Unreal Engine(C++)」。
・「その他」の具体的な内容例: 「NativeScript(2人)」「kotlin」など。
デバイス技術
HoloLensやApple Watch、電子工作用ボードなどの次世代型デバイス技術としては、前回に引き続き今回も「HoloLens」が僅差で1位になった。
今回の目立った変化は、「Apple Watch」が8位→4位にランクアップしたことだ。筆者自身もスマートウォッチ「Pebble」の製品・サービスの提供終了に合わせて、Apple Watchに乗り換えた。最初こそ、文字盤が少なくデザインも制限されていることが不満だったが(※ちなみにPebbleはコミュニティ制作による文字盤が豊富にあった)、スマートフォンなしでもランをGPSで記録できるところや、音楽を聴くための周辺機器が充実しているところなど(例えば筆者はBOSE SoundSport Headphonesを購入した)、製品とその周囲のエコシステムがリッチな点に最近は満足している。筆者のような利用者が増えてきており、Apple Watch開発のニーズが高まってきているのかもしれない。
・「その他」の具体的な内容例: 「BOCCO」「jetson」「DragonBoard 410c」など。
各種アプリを支える技術&ツール
クラウドプラットフォーム
クラウドの結果順位については前回から大きな変化はない。
- 1Azure
- 2AWS
- 3Google Cloud Platform
C#開発者の多い本サイトでは「Azure」の利用者数が多い結果となった。もちろん「AWS」も人気が飛び抜けて高く、「両者が僅差で競り合っている」といえる。
今回の結果で注目すべきなのは、3位の「Google Cloud Platform」だ。11.3ポイントも上昇し、上位2つを猛追する形となってきた。最近になって無料枠の強化が発表されたことなどから、筆者自身も「まずは何かプライベートなことに使ってみたい」と非常に気になっている。半年後、1年後、その勢いがどうなっているか楽しみだ。
・「その他」の具体的な内容例: 「Pivotal Cloud Foundry」。
この他、前回と比較して「IBM Bluemix」が6.9%→14.4%と成長著しい。
データベース&ストレージ
データベース/ストレージの利用意向の人気順は、以下の通りだ(上位7つ)。
- 1MySQL
- 2Microsoft Azure SQL Database
- 3PostgreSQL
- 4Microsoft SQL Server
- 5Microsoft Azure Storage
- 6Redis
- 7MongoDB
データベース技術においては、注目すべき動きがあった。前回は5位だった「MySQL」が、前回まで1位だった「Azure SQL Server」を抜いて1位に躍り出たのだ。
今回は1位から4位までがRDBMSとなり、RDBMSの人気は依然として堅調である。一方でRedisやMongoDBといったNoSQLもそれぞれ4ポイント程度アップしており、NoSQLも徐々に定着しつつあるようだ。
・「その他」の具体的な内容例:「Google Cloud Storage」「GlusterFS」。
IDE(統合開発環境)&開発者向けテキストエディター
IDEやエディターの中では、主に以下のものの人気が高かった(上位5つ)。C#開発者の多い本サイトでは、特にVisual Studioの人気が高い。
- 1Visual Studio
- 2Visual Studio Code
- 3IntelliJ IDEA
- 4Visual Studio for Mac
- 5Atom
前回と比べて順位にはほとんど変化がないが、2位の「Visual Studio Code」は6.2ポイント増え、さらに人気を高めている。今回から新たに追加した「Visual Studio for Mac」は4位に入ったが、今後もこの順位を維持できるのかが興味深い。
・「その他」の具体的な内容例: 「JetBrains Rider(2人)」「Gogland」「Notepad++」「PhpStorm」。
■
以上、本稿の内容が何らかの参考になるとうれしい。
次回のアンケート調査は未定だが、ぜひ次回のアンケート調査にご協力いただけると幸いだ。
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第11回~第15回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
11. 技術トレンド調査: Visual Studio Code登場で競争激化、さらに進んだクラウドへの移行
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。特に開発用テキストエディターの競争が激化して面白くなってきている。
12. 2016年、ReactがAngularを抜いて1番人気に! JSライブラリの利用意向はますます高まっている
Web制作者/開発者が「今後、使いたい」JavaScriptライブラリおよびWeb技術を、ランキング形式で発表。2016年度はこれらを押さえよう。
13. 2016年、人気の「開発技術&ツール」はどれ? HoloLensやXamarinの人気が爆発、Visual Studio Code躍進
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。2016年度後半はこれらに注目しよう。
14. 開発者/Web制作者はどんなアウトプット手段を使っているのか? その頻度は?
Build Insiderが半年ごとに実施しているアンケート調査の結果レポート(前編)。今回の調査テーマは「ITエンジニアのアウトプット」。新技術に取り組む姿勢や、アウトプット手段/頻度についての調査結果を示し、簡単に考察する。さらに各エンジニアが大事にしているキーワードやアドバイスも紹介する。