Build Insider Survey【2015年4月実施】
2015年、人気の「開発技術&ツール」はどれ? ついにクラウドが過半数、AWS vs. Azureの2強時代、Atom躍進
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。2015年度後半はこれらに注目しよう。
「2015年、人気の『JavaScriptライブラリ&ツール』はどれ? Angular vs. Reactの行方」では、Webエンジニアが今後、使いたい「JavaScriptライブラリおよびWeb技術」を、ランキング形式で発表した。本稿は、同じアンケート調査の残り半分を基にした記事で、「デバイス」「スマートフォン」「IDE」など、より幅広い開発技術やツールについて「本当は何が人気なのか」を明らかにする(※ちなみに、本稿と同じ質問内容のアンケート調査を毎年4月と10月に実施している。この定点観測により、技術トレンドの推移を浮き彫りにしたいと考えている。2014年4月および10月の結果はこちら)。
アンケート結果の印象をまとめると、全体的にはIoT技術への関心(特にRaspberry Pi+Windows IoTの関心)が高まっているように感じた。また、クラウド技術の実用が本格化し、ついにオンプレミス技術の利用者数を逆転したような結果も出ている(※ちなみに、6月2日に開催された「AWS Summit Tokyo 2015」のキーノートでは、「クラウドはもはやニューノーマルになった」と説明していたが、まさにその通りの結果だ)。この他、開発用エディターのAtomが急成長している点が印象的である。
- 開発技術全体の動向: 技術領域の人気傾向
- 各種アプリの開発技術: Web開発技術/スマートフォン開発技術/デバイス技術
- 各種アプリを支える技術&ツール: クラウドプラットフォーム/データベース/ストレージ/IDE(統合開発環境)/開発者向けテキストエディター
開発技術全体の動向
まずは、どういった技術領域の人気が高いかをチェックしよう。
技術領域の人気傾向
本アンケート調査では、開発領域を大きく下記の4種類に分けた。
- 1Web制作/Webデザイン/Web開発
- 2次世代デバイス/IoT開発(KinectやOculus Rift、Raspberry Pi、Arduinoなど)
- 3スマートフォン/タブレット開発
- 4Windows/Macデスクトップ開発
前回と比較すると、開発者が関心のある技術領域には特徴的な変動があった。前回1位の「スマホ/タブレット開発」は3位にランクを落とした一方で(10%減)、前回4位の「次世代デバイス/IoT開発」が10%以上伸ばして2位になっている。なお、前回2位の「Web開発」は人気を維持して1位になっている。
各種アプリの開発技術
Web開発技術
「2015年、人気の『JavaScriptライブラリ&ツール』はどれ? Angular vs. Reactの行方」の中で紹介しているので、本稿では割愛する。
スマートフォン開発技術
スマートフォン開発の技術としては、Swift/Java言語などを使ったネイティブアプリ開発だけではなく、C#やHTML5+JavaScript言語などを使ってマルチプラットフォーム対応で開発する技術の人気が高まっている。人気順は以下の通りだった(上位6つ)。
- 1Xamarin(C#)
- 2Windows Phone/Windowsストアアプリ ネイティブ(C#/Visual Basic/JavaScript)
- 3Unity(C#/JavaScript)
- 4PhoneGap/Cordova/Monaca(HTML5)
- 5Android ネイティブ(Java)
- 6iOS ネイティブ(Objective-C/Swift)
本サイトの特徴としてC#開発者の読者が多く、その結果がある程度、ランキングに影響している。こういった事情もあり、前回に引き続きXamarinが1位で大きな変動はなかった。
前回からの相違点としては、「Cordova/Monacaなどを使ったHTML5ハイブリッドアプリ開発」の人気が7%ほど高まり、1つランキングを上げている。また「iOSネイティブアプリ開発」は、Swift登場で注目が集まった前回よりも20%近く減り、4位から6位に転落している。
・グラフ上の選択肢名が省略されている7位以降の項目: 「React Native(Java Script)」「Unreal Engine(C++)」。
・「その他」の具体的な内容例: 「Titanium Mobile」。ちなみに、「Cocos2d-x(C++)」は前回の結果でランキング下位だったため、今回は選択肢から省略したが、回答者ゼロだった。
デバイス技術
KinectやApple Watchなどの次世代型デバイス技術としては、「Raspberry Pi」の人気が続伸している。
また、(Build 2015開催とアンケート調査が同時期だった影響も少なからずあるかもしれないが)「Windows IoT」が2位にランクインしたのも印象的だ(※ちなみに「Raspberry Pi+Windows IoT」の内容を基礎から丁寧に紹介した記事もあるので、興味がある方はぜひ参照してほしい)。
一方で、「Google Glass」は2015年1月に一般消費者向けの販売が中止されたこともあり、前回の2位から大きくランクダウンした(※今回は「メガネ型デバイス(Google Glassなど)」と幅広い選択肢にしたが、それでもこの結果である、この分野自体の盛り上がりが冷やされてしまった印象である)。
・「その他」の具体的な内容例: 「Microsoft Band」「Intel RealSense」「ドローン」「Myo」。
今回、新しい「Apple Watch」が5位にランクインしたのと対照的に、前回5位の「Android Wear」は10位に転落している。前回のAndroid Wearが35%なのに対し、今回のApple Watchが30%と、5%減であることを考えると、腕時計型デバイスも実際の製品が数多く投入されるにつれ、期待から現実へと状況が移った結果、人気も落ち着いてきているのかもしれない。
各種アプリを支える技術&ツール
クラウドプラットフォーム
クラウドの結果についても、C#開発者の多い本サイトでは「Azure」の利用者数が多い結果となった。もちろん「AWS」も人気が飛び抜けて高く、「両者が僅差で競り合っている」といえる。
注目すべきなのは、前回と比較して、1位の「Azure」が8%上昇し、2位の「AWS」が2%伸びているのとは対照的に、「Google Cloud Platform」は2%下落、「Heroku」は7%下落しており、つまりトップ2とそれ以下の差がどんどん開いていっている点だ。「ガートナーがIaaS市場を分析したマジッククアドラント公開」というニュースを見ても、この2つのクラウドプラットフォームがやはり他を圧倒して飛び抜けており、今回の結果はそれと一致していると考えられる。
・「その他」の具体的な内容例: 「Oracle Cloud Platform」「家庭内ネットワーク用クラウド」「クラウドがまだ利用禁止orz」。
この他、前回と比較して「IBM Softlayer」が5%→11%と成長著しい。
データベース/ストレージ
データベース/ストレージの利用意向の人気順は、以下の通りだ(上位5つ)。
データベース技術においては、注目すべき動きがあった。前回は2%差で2位だった「Azure SQL Database」が、今回、僅差ではあるものの、オンプレミスの「SQL Server」を抜いて1位に躍り出た。この結果から、「開発技術がクラウドへシフトしていっており、ついに過半数になってきた」という様子がうかがえるだろう。冒頭で書いたように、クラウドはニューノーマルになったのだ。この他、Azure StorageやAmazon S3などのクラウドストレージも上昇が目立ち、DB界わいも含めて、クラウドは技術者の必修科目になったといえる。
・「その他」の具体的な内容例: 「UniVerse(AIDAM)」「GRAPH DB系」「Realm」。
IDE(統合開発環境)/開発者向けテキストエディター
IDEやエディターの中では、主に以下のものの人気が高かった(上位5つ)。C#開発者の多い本サイトでは、特にVisual Studioの人気が高い。
今回の結果で特徴的なところは、「Atom」が(前回9位から)3位に上昇し、今回8位(前回5位)の「Sublime Text」を抜き去ったことだ。かなり大きな躍進を遂げている。
・「その他」の具体的な内容例: 「AppCode」「MonoDevelop」「LighgTable」。
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以上、本稿の内容が何らかの参考になるとうれしい。
次回のアンケート調査は、10月ごろに実施したいと考えている。また抽選プレゼントを頑張って集めるので、ぜひ次回のアンケート調査にご協力いただけると幸いだ。
姉妹記事
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第6回~第10回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
6. The most popular developer technologies in Japan [October 2014]
This article describes the popularity rankings of development-technologies which developers want to use in the future.
7. 2015年、人気の「JavaScriptライブラリ&ツール」はどれ? Angular vs. Reactの行方
Web制作者/開発者が「今後、使いたい」JavaScriptライブラリおよびWeb技術を、ランキング形式で発表。2015年度はこれらを押さえよう。
8. 【現在、表示中】≫ 2015年、人気の「開発技術&ツール」はどれ? ついにクラウドが過半数、AWS vs. Azureの2強時代、Atom躍進
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。2015年度後半はこれらに注目しよう。
9. In 2015, the most popular developer technologies and tools in Japan: AngularJS vs. React, AWS vs. Azure, and a big leap of Atom
This article describes the popularity rankings of development technologies and tools which developers want to use in the future.
10. なぜ勉強会・カンファレンスに参加するのか? 良かった勉強会・残念だった勉強会
Build Insiderが半年ごとに実施しているアンケート調査の結果レポート(前編)。今回の調査テーマは「勉強会参加」。参加頻度/参加目的/具体的な参加理由/良かった点/残念だった点について結果を示し、簡単に考察する。