Build Insider Survey【2015年11月実施】
技術トレンド調査: Visual Studio Code登場で競争激化、さらに進んだクラウドへの移行
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。特に開発用テキストエディターの競争が激化して面白くなってきている。
「なぜ勉強会・カンファレンスに参加するのか? 良かった勉強会・残念だった勉強会」では、今回の調査テーマである「勉強会参加」に関して、参加頻度/参加目的/具体的な参加理由/良かった点/残念だった点についての結果を、ランキング形式で発表した。本稿は、同じアンケート調査の残り半分を基にした記事で、「Web(JavaScript)」「デバイス」「スマートフォン」「IDE」など、より幅広い開発技術やツールについて「本当に人気があるのは何か」を明らかにしている(※ちなみに、本稿と同じ質問内容のアンケート調査を毎年4月と10月ごろに実施している。この定点観測により、技術トレンドの推移を浮き彫りにしたいと考えている)。
- 第1回(2014年4月)の結果
- 第2回(2014年10月)の結果
- 第3回(2015年4月)の結果
- 第4回(2015年11月)の結果(本稿)
今回のアンケート結果の印象をまとめると、4月時点と比べて全体的には大きな変化はなかった。強いて挙げるなら、クラウド技術へのシフトが進んでおり、特にDB技術ではその傾向が強いといえるだろう。この他、新登場の「Visual Studio Code」の利用意向が非常に強く、この勢いを維持できれば次回のアンケート調査で「Visual Studio」を抜く可能性すらある。また、大多数の読者の関心は「プログラミング言語」に寄せられていることも分かった。一方で、「デスクトップ開発」への関心は以前より弱まっている。
- 開発技術全体の動向: 技術領域の人気傾向
- 各種アプリの開発技術: Web開発技術/スマートフォン開発技術/デバイス技術
- 各種アプリを支える技術&ツール: クラウドプラットフォーム/データベース&ストレージ/IDE(統合開発環境)&開発者向けテキストエディター
開発技術全体の動向
まずは、どういった技術領域の人気が高いかをチェックしよう。
技術領域の人気傾向
本アンケート調査では、開発領域を大きく9種類に分けた。「興味がある」が50%を超えたのは、順に下記の4つだ。
- 1プログラミング言語/スクリプト言語
- 2Web制作/Webデザイン/Web開発
- 2スマートフォン/タブレット/ウェアラブル端末開発
- 4次世代デバイス/IoT開発(KinectやOculus Rift、Raspberry Pi、Arduinoなど)
前回は4項目だったが今回は9項目に数を増やしたので正確には比較できないが、前回からの変動を見ると、Web開発、スマホ開発、IoT開発などに比べて相対的に「Windows/Macデスクトップ開発」が大きく順位を下げている。その原因の1つとして、Windows 10と、その上で動作するUWPアプリが(執筆時点で)それほど盛り上がっていないことが大きいのではないかと考えている。
各種アプリの開発技術
Web開発技術
JavaScriptライブラリ/ツールの中で、実際のプロジェクトでの利用意向が高い(=「使いたい」が40%以上の)ジャンルは、以下の通りだった(上位4つ)。
- 1UIライブラリ(jQuery UI、Bootstrapなど)
- 2MV*などの各種フレームワーク(ReactやAngularJSなど)
- 3DOM操作(jQueryなど)
- 3altJS(JavaScript 代替。TypeScriptなど)
前回から目立った変化はない。強いて挙げるなら、上位4位までの中では「AltJS」が2位から同率3位に転落したことくらいだ(といっても、数値的には誤差の範囲である)。
・5位以降の順位: 「JavaScript パッケージマネージャー(npmやBowerなど)」「JavaScript テストツール(Jasmineなど)」「Webグラフィックス/データ可視化(three.jsなど)」「CSSプリプロセッサー(CSSメタ言語。Sassなど)」「タスクランナー(Grunt、gulp.jsなど)」「UIコンポーネント(Web Components)」「モバイルフレームワーク(jQuery Mobileなど)」「WoT(Web of Things: IoTをWeb技術で実現)」「ユーティリティライブラリ/データ操作(lodashやUnderscore.js、Linq.jsなど)」「JavaScript ライブラリ/ツールは不要」「その他」。
・「その他」の具体的な内容例:「electron」「d3.js、c3.js」。
スマートフォン開発技術
スマートフォン開発の技術の人気順(=「使いたい」が30%以上)は、以下の通りだった(上位6つ)。
- 1Xamarin(C#)
- 2Windows Phone/UWP(Windowsストア)アプリ ネイティブ(C#/Visual Basic/JavaScript)
- 3Unity(C#/JavaScript)
- 4iOS ネイティブ(Objective-C/Swift)
- 5Android ネイティブ(Java)
- 6PhoneGap/Cordova/Monaca(HTML5)
スマホアプリ開発技術も、前回と比較して大きな変動はなかった。
本サイトの特徴としてC#開発者の読者が比較的多く、その結果がある程度、ランキングに影響していることに注意してほしい。こういった事情もあり、前回に続き「Xamarin」が1位となったが、前回より9%近く下落して他の選択肢との差がほとんどなくなってきた。また、前回4位だった「Cordova」は6位に転落している。つまり、マルチプラットフォーム対応でスマホアプリを開発できる環境の勢いが少し弱まってきているようだ。この理由としては、Swift言語のバージョンアップなどで効率的にネイティブ開発できる環境が整ってきているので、あえてマルチプラットフォーム対応の開発環境を選択しなくなってきているのではないかと想像している(「iOS ネイティブ」の順位/割合がともに前回よりも伸びていることからも、これが想像される)。
なお、Xamarinは「利用したい」というニーズは高いものの、OSごとに年10万円程度とそれなりに高額なライセンス料が発生するため、気軽に使えず実利用にはなかなか結び付いていないという印象がある。そういった点も、Xamarinの人気が下落した一因になっているかもしれない。
・グラフ上の選択肢名が省略されている7位以降の項目: 「React Native(JavaScript)」「Unreal Engine(C++)」。
・「その他」の具体的な内容例: 「Appcelerator Titanium」「Kotlin」「Cocos2d-x」。
デバイス技術
KinectやApple Watchなどの次世代型デバイス技術として「使いたい」が30%以上だったのは、以下の3つだ。
- 1Raspberry Pi
- 2Windows IoT
- 3Kinect
このランキングも、前回と比べて上位はあまり変動がなかった。比較的ランク上昇が大きかったのが「Oculus Rift」で、8位(25.2%)→5位(26.8%)になっている。Oculus Riftに加え、PlayStation VR(コード名:“Project Morpheus”)も2016年中に登場予定となっており、来年はVR(=バーチャルリアリティ)体験ができるヘッドマウントディスプレイ環境が盛り上がる兆しが見えている。
・「その他」の具体的な内容例: 「HoloLens」が3件、「現状のAndroid/iOSで満足している」。
各種アプリを支える技術&ツール
クラウドプラットフォーム
クラウドの調査結果についても、C#開発者の多い本サイトでは「Azure」の利用者数が多いものとなった。もちろん「AWS」も人気が飛び抜けて高く、「両者が僅差で競り合っている」といえる。「使いたい」が30%を超えたのは、以下の3つ。
- 1Microsoft Azure
- 2AWS
- 3Google Cloud Platform(App Engineなど)
前回と比較して、1位の「Azure」が3.7%上昇だったのに対し、2位の「AWS」が7.1%も上昇しており、AWSの勢いがさらに伸びてAzureとAWSの差がさらに縮まった。また、「Google Cloud Platform」も1.3%ほど上昇しているが、上位の2つに追いつける状況にはまだなっていない。
・「その他」の具体的な内容例: 「会社の方針でクラウドはまだまだ使用できなさそうです…」。
データベース&ストレージ
データベース/ストレージの利用意向の人気順(=「使いたい」が30%以上)は、以下の通りだ(上位6つ)。
- 1Microsoft Azure SQL Database
- 2PostgreSQL
- 3Microsoft Azure Storage
- 3Amazon S3
- 5MySQL
- 6MongoDB
データベース技術においては、前回に続き、さらにクラウドへの移行が進んだようである。「Azure SQL Database」が3.7%増えて引き続き1位だったのに対し、前回2位だった「オンプレミスのSQL Server」が10.4%も減らして2位から8位に転落しているのだ。
この他に目立ったところでは、「PostgreSQL」が前回9位(22.3%)から今回2位(40.0%)へと大躍進している。アンケート期間中に「PostgreSQLカンファレンス2015」があったので、その影響もあるかもしれないと考えている。次回の調査で、どのように推移するかを見守りたい。
・「その他」の具体的な内容例: 「Cassandra」「Realm」「H2 Database」「Datomic」「couchbase」。
IDE(統合開発環境)&開発者向けテキストエディター
IDEやエディターの中では、主に以下のものの人気が高かった(=「使いたい」が20%を超えた、上位の7つ)。C#開発者の割合が高い本サイトでは、特に「Visual Studio」の人気が高く、今回もやはり不動の1位だった。
- 1Visual Studio
- 2Visual Studio Code
- 3Visual Studio(ReSharper プラグイン搭載)
- 4IntelliJ IDEA
- 5Atom
- 6Xcode
- 7Android Studio
今回の結果で特徴的なところは、初登場の「Visual Studio Code」が53.5%でいきなりの2位となったことだ。なお、今回の結果には含めていないが、同アンケート内で調査した日本マイクロソフト独自の「Visual Studio Code を Mac OS X/Linux で使用している」という質問項目はそれほど高いパーセンテージではなかったので、「Visual Studio Codeは使いたいが、まだ本格的には使っていない」という人が多いのかもしれない。
この他、前回3位に上昇した「Atom」は、5位に転落したもののパーセンテージは2.5%増えており、依然として好調だ。テキストエディターの人気競争が激化しており、ますます面白くなってきた。
・「その他」の具体的な内容例: 「NetBeans」が2件、「Zend Studio」「LightTable」「ReSharperを使ってみたいですが、上司を説得するための材料が欲しい。MarkdownのエディターとしてAtomを使っていますが、もっと軽くて使い易いものは無いですかね。」
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以上、本稿の内容が何らかの参考になるとうれしい。次回アンケート調査時にメールで通知してほしい場合は、こちらからメールアドレスを登録されたい。
※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第9回~第13回)のみ表示しています。
連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。
9. In 2015, the most popular developer technologies and tools in Japan: AngularJS vs. React, AWS vs. Azure, and a big leap of Atom
This article describes the popularity rankings of development technologies and tools which developers want to use in the future.
10. なぜ勉強会・カンファレンスに参加するのか? 良かった勉強会・残念だった勉強会
Build Insiderが半年ごとに実施しているアンケート調査の結果レポート(前編)。今回の調査テーマは「勉強会参加」。参加頻度/参加目的/具体的な参加理由/良かった点/残念だった点について結果を示し、簡単に考察する。
11. 【現在、表示中】≫ 技術トレンド調査: Visual Studio Code登場で競争激化、さらに進んだクラウドへの移行
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12. 2016年、ReactがAngularを抜いて1番人気に! JSライブラリの利用意向はますます高まっている
Web制作者/開発者が「今後、使いたい」JavaScriptライブラリおよびWeb技術を、ランキング形式で発表。2016年度はこれらを押さえよう。
13. 2016年、人気の「開発技術&ツール」はどれ? HoloLensやXamarinの人気が爆発、Visual Studio Code躍進
開発者が「今後、使いたい」と考えている開発技術やツールを、ランキング形式で発表。2016年度後半はこれらに注目しよう。