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Build Insider Survey【2014年10月実施】

Build Insider Survey【2014年10月実施】

“3K”と言われるほどブラックではない?! デベロッパー&Web制作者の実態と未来予想

2014年11月12日

実働時間や勤務時間外でしていること、転職する際の決め手、現職と転職希望先の職種、東京オリンピックが開催される2020年のIT業界予想などのアンケート調査結果を紹介。

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
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 IT業界といえば、新“3K”(=「きつい」「帰れない」「給料が安い」)という言葉で表現されるように、過重労働させられるため、今の若者には敬遠されている業界というイメージがある。実際にそうなのか、実態を調べるため、実働時間などをアンケートで調査した。また、他にも以下のような項目を調査している。

  • 実施期間: 10月9日~28日
  • 総回答数: 140件(各質問における有効回答数は、各グラフ画像上の「回答数」を参照)
  • 回答者属性: こちらを参照

 それでは、さっそくアンケート結果を紹介していこう。

デベロッパー/Web制作者の実態

 ここでは、デベロッパー/Web制作者の実態についてアンケート調査した結果を紹介する。

実働時間

実働時間[単一回答]
実働時間[単一回答]

 多くの企業の就業規則では、平日1日の労働時間は8時間であることが一般的だろう。そういった基準で、本アンケートでは9時間以上を「残業している」と捉えている。アンケート結果を見ると、38%程度が8時間以内で仕事をしている(学生や無職の回答者も何人かいるので、その分を少し差し引いて考える必要がある)。

 日本の企業の場合、どの業界でも1~2時間程度の残業をしているところは少なくないだろう。このアンケートで「9~10時間が平均的な労働時間(=1~2時間程度の残業)」と答えたのは43%だ。累計すると、10時間以内で仕事をしている人は81%程度となる。この8割の人は「日本社会における平均的な労働者」と言えるだろう。

 確かに「2割近くの人がオーバーワーク状態にある」と言えるものの、「大半の人はそうではない」という結果になっている。筆者は最初にこの結果を見て、「“IT業界は3K”と言われるほど“ブラックではない”」という印象を持った。読者の皆さんや、IT業界への就・転職を検討している人は、どう感じるだろうか。

 次に、年齢別に見ると、もっと違いが見えるかもしれないと思い、そのグラフも作ってみた。

実働時間(年齢別)[単一回答]
実働時間(年齢別)[単一回答]

回答者数の多かった24~44歳を4つの年代に分けてグラフ化した。

 10時間(=残業2時間、水色の部分)を基準にしてグラフを見ると、年齢が上がるほど水色の左側が狭くなっており、若いほど働き過ぎになっている割合が高い。また、水色の右側も徐々に狭くなっており、若い人ほど労働時間が短い結果になっている。

 このことから、若い人は働く時間にバリエーションがあり、年齢を重ねるほど、1~2時間程度の残業をする人が増えていることが分かる。年齢を重ねるほど、それ以上の時間を残業したり、それ未満の時間で仕事を切り上げたりする人は少なくなっている。これは徐々に働き方がうまくなって労働時間を調整するスキルが高まっているということだろうか。特に40~44歳になると、8時間で残業をしない人が他の年代と比べても増えているのが興味深い。

 なお、各年代の平均労働時間を計算すると以下のようになり、35~39歳がピークで、40歳を超えると労働時間が短くなっている。

  • 24~29歳: 9時間14分
  • 30~34歳: 9時間23分
  • 35~39歳: 9時間35分
  • 40~44歳: 9時間00分

業務時間外でしていること

 IT技術者は技術を学び続ける必要があるため、業務時間外で勉強したり何かを作ったりしている人が少なくない。アンケート調査の結果を見ると、以下のようなことをしている人が多いようだ。

  • 1スキルアップ/情報収集
  • 2イベント/コミュニティ活動(参加/運営/登壇など)
  • 3Webサイト/サービスの制作
  • 4作業を効率化するための社内/個人用のツールの開発
  • 5スマートフォン/タブレットアプリ開発
業務時間外でしていること[複数回答可]
業務時間外でしていること[複数回答可]

6位以降の順位: 「執筆活動(書籍/Web記事/ブログなど)」「デスクトップ/コンソールアプリ開発」「ライブラリ開発」「ゲーム開発」「Maker/モノづくり系(ロボット作成/3Dプリンター/センサープログラミングなど)」「何もしていない」。
「その他」の具体的な内容例: 「オープンソース翻訳」「副業」など。

 やはり9割近くの人が「スキルアップ/情報収集」を行っている。何かを作っている人では、「Webサイト/サービスの制作」が特に多い。

 この結果も、次のように年代別に比較してみた。

業務時間外でしていること(年代別)[複数回答可]
業務時間外でしていること(年代別)[複数回答可]

 各年代で大きな違いはないと感じられる。強いて挙げれば、執筆活動やスマホアプリ開発は35~39歳が他の年代よりも相対的に多く、ゲーム開発やMaker/モノづくり系は24~29歳が多い。

デベロッパー/Web制作者の転職事情

 IT業界は移り変わりが早く、終身雇用で一生を同じ会社で過ごす人よりも、キャリアアップを目指して転職する人が少なくない。そういった転職の事情についても調査してみた。

転職の決め手

 転職をする場合に、何がその決め手となるかを聞いたところ、主に下記の4つが人気だった。

  • 1転職するなら、今、最も興味のあるテクノロジ(最先端技術など)が使えること
  • 2転職するなら、年収が大きくアップすること
  • 3転職するなら、忙しすぎないこと(ワークライフバランス、実働時間が短い)
  • 4転職には興味がない

 1位は他の項目を引き離して人気があり、技術者にとって「関心のある技術が使えること」が非常に重要であることが分かった。次に大事なのが、やはり「年収アップ」だ。

転職の決め手[単一回答]
転職の決め手[単一回答]

5位以降の順位: 「転職するなら、気の合う仲間が会社内に多いなど、人間関係が良いこと」「転職するなら、これまでの経験が生かせる仕事内容であること」「フリーランスで独立したい」「起業したい」「転職するなら、福利厚生や育児休暇などが充実していること」「転職するなら、終身雇用してくれる会社であること(社員の勤続年数が長い)」。
「その他」の具体的な内容例: 「転職するなら、多くの人が使うシステムに携われること」「すでに独立している」「教育制度がしっかりしていること」など。

 この結果についても、年代別にグラフ化してみた。次のグラフを見ると、年代別で大きく結果が分かれているのが分かる。若い人ほど「興味のあるテクノロジが使えること」を重視し、年齢を重ねるほど「年収アップ」を重視したり「転職に興味がない」人が増えたりする傾向にある。

転職の決め手(年代別)[単一回答]
転職の決め手(年代別)[単一回答]

現職の業務種別

 今回のアンケート回答者の現職の業務種別は、「システム開発/SI」が41%で1位、「自社のサービス/Webサイトの開発・運用」が22%で2位だった。

現職の業務種別[単一回答]
現職の業務種別[単一回答]

「その他」の具体的な内容例: 「学生(3名)」「無職」「計測機器のシステム開発」など。

転職希望先の業務種別

 上記と同じ選択肢で、希望転職先の業種を聞いたところ、「システム開発/SI」が18%(約23%減)で2位に後退し、「自社のサービス/Webサイトの開発・運用」が50%(28%増)で1位になった。SIの人気は下降気味で、代わりにサービス/Webサイトの開発に対する人気が高まっている。

転職希望先の業務種別[単一回答]
転職希望先の業務種別[単一回答]

「その他」の具体的な内容例: 「何でも(2名)」「開発マネージャー」など。

2020年東京オリンピック開催時のIT業界予想

 IT業界は変化が早いので、10年先を見通すことは不可能に近いが、約6年後の2020年であれば何とかイメージできるかもしれない。そこで、東京オリンピックが開催される2020年、IT業界が成長/衰退しているかについて、デベロッパーやWeb制作者に推測してもらった。

2020年のIT業界の状況推測

2020年のIT業界の状況推測[単一回答]
2020年のIT業界の状況推測[単一回答]

 上の円グラフの右半分は「拡大している」となっている。つまり大半の人は「2020年のIT業界は今より成長している」と推測しており、明るい未来を想像しているようだ。

 この回答結果も年代別のグラフを作成した。次のグラフの「変わらない」(=水色)の部分を基準にして左右の棒の大きさを見ると、若い人ほど左側が大きく、右側が小さい。つまり、「若い人ほど楽観的な未来予測を立てており、年齢を重ねるほど悲観的な未来予測をしている」と言えるだろう。

2020年のIT業界の状況推測(年代別)[単一回答]
2020年のIT業界の状況推測(年代別)[単一回答]

状況推測の理由

 上記のようにIT業界の未来を予想しているが、その理由を自由回答のコメントで記入していただいた(質問:「Q.“Q11”の回答をしたのはなぜですか? 2020年の日本のIT業界は、具体的にどうなっていると思いますか?」)。筆者が厳選しえてまとめた代表的なコメントを紹介する。

かなり拡大している/拡大している
  • 今より技術(例:IoT、クラウド、スマホ、ウェアラブルなど)が進歩しているから。/ それにより、IT技術の活用範囲が生活の隅々にまで広がるから
  • SIは衰退するが(あるいは団塊世代がリタイアして)、Webサービス市場が成長したり、新しい市場が発生したりすると思われるから
  • オリンピックに向けて、国内需要とIT投資が今よりは増加するから(新型システムから、既存システムのリプレイスまで案件が増えると推測)
  • いまだコンピューターを使用していない事業者もおり、今後も導入が進むものと思われるため
  • 国内のサービスを外国人向けに展開する事案が増えると予想するから
  • ソフト開発がますますしやすくなるから。/ 開発・運用を自動化するなどして作業を楽にするシステムやツールが普及していると思うから
  • 確かに拡大しているが、技術者は不足していると思う
やや拡大している
  • 上記のコメントと同じ意味内容のものは割愛している
  • オリンピック特需はあるが、それに日本のIT業界が対応できず、海外への外注や低コスト化が進むから。/ アメリカ、中国にさらに差を付けられる
  • 消費税増税による景気後退と、オリンピック特需による一時的な需要増で相殺され、結果的には「微増」になるように思うから
  • 技術やサービスは向上するが、通信インフラが追いつかないため、頭打ち状態になると思う
  • すでに、急激な変動が起こらない規模まで、産業が拡大していると思う。大規模な企業からの下請けで開発を行う多くの小規模な企業などが、工業製品に見られる中小の工場の困窮に似た状況を迎えている可能性もあり、純粋な意味での「産業の発展」とはいかない状況になっているかもしれない
  • SI業界がもっと衰退していて、「納品のない受託開発」みたいな手法がもっと広まっているといいと思う
変わらない
  • 上記のコメントと同じ意味内容のものは割愛している
  • 拡大する分野(Web系など)と縮小する分野(業務パッケージソフト系など)で相殺されてしまい、総体としてそれほど変化はないと思うので
  • IT関係の需要は増えるが、海外との競争も激しくなるので、国内業界の規模はあまり変わらないのではないかと思っている
  • 大手を頂点とする産業構造が変わらない限り横ばいで、日本発のITサービスは今後も生まれないと思う
  • 5年前と今がさほど変わっているようには感じられないので、5年後も今とさほど変わっていないと思う。/ 「IT業界全体の合計売上高」の大半を占める大手SIとその顧客企業の関係がそう簡単に変わるとは思えないから
  • 業界全体の規模は変化しないと思う。 ただし、技術力の無い企業は淘汰されていくと思う
  • 分からない。/ なんとなく
やや縮小している
  • 海外パッケージ製品が充実し、発注側が人月商売のばからしさに気付き、日本のIT産業(主に受託)にはお金が行き渡らなくなるため。/ 外注が減ると想定している。外注が減ればIT業界としては縮小傾向になる。/ IT部門の内製化が進み、IT産業としては縮小していく
  • 日本のIT業界は若い人達を成長させる環境が他のIT先進国よりも少ないと感じる。/ コミュニティやハッカソンなどで優秀な技術者が評価され活躍できる場は増えているが、技術者が海外に流出していたり、市場が海外向けになっていったりしていると思う
  • 海外企業の参入増加、グローバルスタンダードへの移行がある。/ 日本は、ハード分野がIT産業の中心を占めているが、これからソフトが主体になると予想されるので、立場が弱くなりそう
  • Web系は現状維持だがやや保守的に。先進的な人材はIoTかその後継技術にシフト。SIは海外ベンダーの日本の優先度低下、人材離れにより縮小。超大手は海外比率の拡大で現状維持。中堅以下はWeb系のイノベーティブでない仕事にシフト
  • 1件当たりの金額は縮小するが、案件数は増え、小さく速く作る潮流がより強くなるのではないか。さまざまな案件に対応できる、フルスタックエンジニアがさらに重宝される時代になる
  • クラウド化により専門性が少なくなる。/ クラウドで実現できることが増えて、投資額を減らしても今と同等かそれ以上のことができている
縮小している/かなり縮小している/産業自体が消滅している
  • 日本の人口減少が加速してそうだから。無くなりはしないけれど、競争が激化し、今以上にエンジニアが疲弊し、現状のトラックやバス業界のような状態になりそう
  • 日本の産業構造では技術の進展についていけないので、海外企業に駆逐されて縮小する。/ グローバル競争での負けが濃厚になっている。/ 世界全体で上位の数サービスのみが残り、IT後進国が残ることは難しい
  • オフショア化がさらに進む。クラウドが普及し、オンプレミスはSOHOや零細企業限定のビジネスになる
  • ハードの値段がさらに1桁下がるため。プログラミング自動化が進んでいるため。需要そのものが減退しているため
  • 若い人がいない。高齢化し、人員不足でIT投資が遅れ、日本全体が衰退する

2020年の自分予想

 上記のようにIT業界の未来を予想しているが、そのときに、自分がしていることの予想を自由回答のコメントで記入していただいた(質問:「Q. “Q12”のような業界になった結果、2020年のあなたは何をしていると思いますか?」)。こちらも、代表的なコメントのみを厳選し、まとめて紹介する。

  • 大半の人が「現職と変わらない」と回答している
  • 「Web/クラウド系エンジニア」「新サービスの開発」「新技術によるソフトウェア開発」という回答も多かった
  • 海外に出て行く「日本を離れて研究開発をしている」「海外へ渡っていたい」「中国でIT系の仕事をしていると思います」などの回答もあった
  • 「サッカー選手」は実現が大変そうだが「業種転換」など大胆なジョブチェンジを考えている人もいるようだ
  • 「引退(後進の後見)」「楽隠居したい」「セミリタイアしていたい」「定年退職後、趣味でコツコツと開発を行っている」など、引退や退職という回答もあった
  • 中には「田舎にITを普及させたい」など、自分なりの夢を持っている人もいた
  • なお、前述の質問に「産業自体が消滅している」と回答された方は「無職」と記載されていた……

 今回のアンケートは記入箇所も多く、回答が大変だったと思うが、多くの方にご協力いただけたことに感謝したい。おかげで興味深い結果資料を作成でき、今後のコンテンツ作りの参考になった。

 未来予想に関するコメントは、どれも納得させられる内容だった。総合すると、“明るい未来”を考えている方が多かったので、逆に筆者自身がIT業界の先行きに対して少し勇気がもらえた気がした。この気持ちを大事に、Build Insiderで未来に役立ちそうな新技術情報を発信していきたいと思うので、ぜひ今後も本サイトをご愛読いただけるとうれしい。

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第3回~第7回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

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